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南河紅狼様、「王国騎士団物語」感想。ネタバレあり


大変お待たせいたしました!
紅狼様の「王国騎士団物語」を拝読させていただきました。

「王国騎士団物語」
http://telesco4649.fem.jp/novel-kn/knights-contents.htm


美麗なキャラクタ紹介のイラストに魅入られて、「アルゼインのイラスト好みだぁー!」とか思いながらうきうきと小説ページを見ました。
ええと……どのお話から読んでも大丈夫なのかな?
全体を見てそう考えたあと、どれから読むか迷いに迷って、
「蒼穹の空に」→「騎士は静寂を暁に染めゆく」→「騎士への受難」→「雨に濡れる騎士」→「黒の恐怖」
の順序で読ませていただきました。
未完結の作品はちょっと今回割愛します、01だけ見て連載の続きが待てなくなって紅狼さんをせかすなんてことがあったらいけませんので!

さて、順序として正しかったのかどうかはわかりませんが、お話の筋としては時系列順に読んだのかな? と読み終わったあとに思いました。
最初に読んだのが「蒼穹の空に」だったので、魔族との戦い! これはとてもどシリアスな話に違いない。主人公はアルゼインとエイリアスか。あれ、でもイラストで気合はいってたのは一番上の二人(そのときはまだ名前を覚えていなかった)だったような……。と思いながら読み進めます。
私は当然ながら、魔族と戦ったことはありません。(当たり前だ)
その力がどれだけ強大なのか想像もつかないし、人間と比較してどっちが強いのかというのもさっぱりわからないです。だけど魔族襲来のダメージは王都に、民衆に、騎士たちに、そしてアルゼインの心に、深く残ったのだと思います。
ディルが9歳のときに魔族との戦いはあったわけですが、幼心に怖くて仕方なかっただろうなあ、今の彼からは想像つかないけれども。
この戦いで若き頃のアルゼインやエイリアスは何を感じ、何を誓ったのか、幼い頃のリーディアやディルが騎士になる基盤はここでできあがったのか……などと思いを馳せてみます。

時代はそれから十三年(だったかな?)経った王都。
美形で自信家のディルと、無愛想で真面目なリーディアコンビの登場です。
イラストを見たときに、なんとなくディルに儚い美しさのようなイメージがあったので、きっと彼は大人しいキャラなのだろうと思いきや、イメージを完璧に覆した、まるで大きな子供のような彼に最初は、あーこのタイプの自信家は自尊心がチョモランマのようでちょいと苦手だわ、とすら思いました。
リーディアにしても、無愛想で真面目なお兄さん。私は真面目は流行らない、世の中甘い液を吸って生きるべしが根底に流れている人間なので(ディルかリーディアか似ているほうを選べといわれたら完璧ディルです)リーディアにも最初は苦手意識がある状態で、「でもこれからきっとときめくんだぜ?」と期待しながら読み進めます。
お酒に弱いリーディアと、辛いもの大好きなディルの食事のシーン。お、美味しそう。この地方では魚が高級品なんだなあ、などと思いながら、片手にはポテトチップス、片手にはウイスキーを持ってばりぼりしつつ読み進めます。すみません、あまりに美味しそうだったので私もディルたちとお酒を飲んでしまいました(汗)
そして序盤、酒泥棒を捕まえるお話かな? と思っていました。
高級酒をぶった切ろうとするリーディアと、それを止めるディルのやりとり、これがフルーツタルトだったらきっとディルとリーディアの立場が逆になるんだろうなあと思ったのは後からです。
なんだかはちゃめちゃな精霊王もどきを追いかけてどんどんお話が展開していき、途中から密輸の話とかも入ってきて、おおおおおお、と思っている間に話はあれよあれよとシリアスな方向に。
魔道具も元に戻って一安心と思ったところで、イーレンが精霊王の口八丁にそそのかされた! と思っていたら、その精霊王の正体は!
ここらへんから私はトイレに行く間も惜しんで話の流れを夢中で読みました。
早くイーレンを元に戻さないと、魔道具として処分されてしまう。ハロルドが最後まで必死になって説得を試みるシーンで、ハロルドー! あんた、メッシュとかいれちゃってちゃらついているけれどもいい男だわ、とハロルド株20円アップです。
とはいえ、私、このお話の中で一番感情移入しちゃったのはセラドットだったりします。魔法の力は信じられるけれども、人の力は信じることができなかった……それとはちょっと違うのかな、とても孤独な人だったんだと思います。ユングによれば世の中には外側に興味を持つ人と内側に興味を持つ人がいるらしいです。セラドットはたぶん表向きは外交的なのだろうけれども、完璧に外に興味がある人間(ディルのような)とは違い、自分の満足するものを作り出したいという芸術家気質なところもあり、だから外側の「成功」だけでも満足せず、内側の「自己満足」でも満足せず、本当は自分の外向きの成功だけでなく、内側の欲求を満たしてくれる“誰か”や、“何か”を欲していたのだと思います。
それがちょっと偏執的な形で最後は残念な結果を迎えてしまったわけですが。
そもそも力というのはみんな間違った形で使おうとは思っていないですよね。その人その人が、自分の中の「正しい」と感じる方向に向かってベクトルが動くわけで、そういう意味ではここに出てきた登場人物はみんな、自分の望む「正しさ」のために全力で動いた結果、こうなったのだろうなあ、と最後の顛末を見て思いました。

えー、ひとつの話を説明するのに随分長くなってしまいましたが(汗)
次のお話はリーディアとディルの中身が入れ替わってしまうお話です。
もうこの頃にはディルもリーディアも私大好きですので、そんなふたりが入れ替わるなんて、お約束だけれどもなんと美味しい。
世話の焼けそうなディルの副団長、ヒュールの姉さん女房気質も見ていて微笑ましいし、普段真面目なリーディアがぐーたらしていて、ぐーたらなディルがせかせか働いて、そして女官たちがギャップ萌えでふたりの騎士団長を囲む……。
フルーツタルトをもしゃもしゃ食べているディルは可愛いだろうし、隙だらけなリーディアも可愛いだろうなあと、不覚にも私もそう思いました。
そして事件発生ですが、ここで入れ替わるのだろうなあとは自分でも予想していました。だけどディルが痛いところだけリーディアに押し付けて美味しい役をいただいていったところは、さすがはディルさんだなあと思いました。そして苦労人のリーディア(笑)

思いのほか長い感想になってきたので、番外は割愛したほうがよさそうです。(汗)
そのうち日を改めて裏の小説も読んでしまおうと思うくらい面白かったです。

さて、そんな「王国騎士団物語」でしたが、ちょびっとだけ重箱の隅を突きます。
紅狼さん自身、昔の文章だとおっしゃったように、少しだけ読みにくい部分があります。文章がというよりは、設定の部分でしょうか。私がファンタジーを最近読んでいないせいもあるかもしれませんが、“魔法”という概念を理解するまでにちょっと時間がかかりました。
一見万能に見えるけれども色々制約もある魔法。だけどどこにどういう法則や制限があるのかまったくわからず、イーレンにしても、「素質者」というのは最初魔法の素質がある人だと思っていたんですが、あとのほうになると魔法の素質がない人のほうが稀有だとわかったりして、じゃあ素質者というのはどういうものなのか……と考えたのですが、魔法士になる素質のある人なのでしょうか?
魔法と精霊はどういう違いがあるの? とか
精霊王って厳密に言うとどういう存在なの? とか
この王都においての魔法というものがどういうものなのか疑問に残った箇所がいくつかありました。
もしかしたらしっかり説明されているのを私が斜め読みで飛ばしたという可能性もありますが(汗)

最後に、ひとつだけリンクミスをば。
蒼穹の空に2→3のリンク切れがありました。
えー。色々語りすぎて誰かから苦情がこないか心配ですが、ディルやリーディアにきゅんきゅんしました。このような感想でよろしかったでしょうか?
続きを楽しみにしていますので、是非よろしくお願いします。
このたびは素敵な作品をありがとうございました!
 

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中川礎様、Dear baby,my blueの感想

[Dear baby,my blue]
http://2style.net/motoi/new/index.html

最初に言わせていただきたいことは、やはり音楽をやっていた人は音楽をやっていない人とはまったく違う作品を作るということです。
私なんて、ピアノをやっていたと言うのも恥ずかしいくらい中途半端なところでやめてしまいましたが、やはりピアノを題材にした友人の作品を読んでも、ピアノを弾いたことのある人と弾いたことのない人ではまったく違うタッチになるんですよね。
私が最初に読んで思ったことは、弦楽器を演奏したことのある人はまったく違うタッチで話を書くということです。
私の勘違いでないと思いますが、中川様はきっと弦楽器をやっていたんじゃあないかと思います。
演奏に専門用語が出てくるとかそんなのではありません、読んでいてその楽器をきっと触ったことのある人、音楽をやったことのある人の書く文章だな…そう思いました。

「Dear baby,my blue」は、中川様がおっしゃるように、音楽が舞台の話ではありません。
どちらかといえば音楽をバックミュージックに、人間の奏でる人生の音楽を聴くといったほうがいいかもしれません。
ちなみに私がバックミュージックに選んだのは古川展生さんの「時には母のない子のように」です。チェロというのと、哀愁漂う世界観、そして主人公であるかなでの人生とか、そういうものをイメージしてかけていたんですが、You Tubeにないか探してみたんですがうまく見つけられず仕舞いでした。
みなさん、古川さんのCDをツタヤで見つけたら是非借りてみてください。(どんな回し者だ)

それでは、肝心な感想のほうですが、実際にどこかにありそうな話だなと思いました。
かなではクールビューティーだけれども、それに嫌味がない性格をしていて、単純にクールを演じている女性とは違って中身のしっかり詰まった格好いい女性です。
最初ガラス窓を割ったときには、この女性、すげー怖いと思ったのですが(失礼)、知れば知るほど、彼女のことが好きになっていきました。
私のお気に入りは孝輔くんです。こんなさわやかな彼氏、私も欲しいわ! と思いました。他の人にしたってそうなのですが、この作中に出てくる人には嫌味なところがまったくありません。
作品を好きになれるかどうかの大切なところに、主人公たちを好きになれるかどうかって重要だと思うんですが、その点、彼らはみんなとても素敵な人たちだと思いました。
これはちょっと意外かもしれませんが、私はかなでのお父さんが好きです。浮気ばっかりしているゴルフクラブの社長さん。だけど娘の演奏会は聞き逃さないし、癌になったときですら嫌味のない性格。きっと彼の周りに集まった人たちはお金が目当てだったとしても、彼のことを嫌いになれなかったんじゃあないかと思います。
あおいちゃんは本当に普通のお嬢様という性格をしているのですが、これがまた素直な子で、たぶん孝輔くんはこういうあおいちゃんの素直な部分に惹かれたんじゃあないかと思います。お母さんも素敵な方ですよね。こういうお母さんやおばさんが知り合いにいたら私も大好きになってしまいそう。
そして忘れてはいけないのが、王子様こと笹井誠くん。
私はこういう駄目で弱い男に目がない悪趣味な女でして、でも誠くんはすごく性格のやさしい、繊細な男の人だと思いました。
どうしても文系の私からすれば、運動をやっている人はどこか無神経なところがあるというイメージがあるのですが、よくも悪くも、誠くんは繊細にできているんだなと思いました。

しかし、文中の
──あたしはずっと、死にたかったんだわ
の部分を読んだときには胸がずきりとしました。
しにたいしにたい言う登場人物なんて、小説を読めばごまんといるわけですが、なんというのでしょうか、この作品はとても「リアル」にできているんですよね。
かなでの生の感情が篭っていて、胸がしめつけられるような思いでした。

全体をとおして言えることは、後味がとてもいい作品ということです。
過剰に不幸なわけでも、キャラを愛しすぎてハッピーエンドしか用意できなかった話でもありません。
人生の起伏や、人間同士の織り成す感情、いいことがあっても、悪いことがあっても、結局人間は生きていかなくちゃいけなくて、何かに打ちのめされても、癒えない傷があっても、きっと最後は前を向くのだろう、そういう終わりかたでした。

かなでさんのチェロが聞いてみたかったです。
プロの演奏とは違う人生の深みの染み渡った演奏をしてくれそうな気がしました。

最後ですが、とても素敵な作品を拝読させていただきました。
ありがとうございます!

支羽様「その日、電化店にて」感想。(ネタバレあり)

支羽様、このたびはご依頼ありがとうございます。
遅れてしまい申し訳ありません。
普段ブラックな作品を書かれるとのことは先に感想を書いたみなさまの記事でなんとなく知っていただけに、正直びくびくしながらURLを開きました(笑)

「その日、電化店にて」
http://readerxxxx.web.fc2.com/novel01/44-kal-denka.html

あらすじ
暗雲は現代を生きる侍ともいうべき時代の化石。一方5歳の幸菜は利発な現代っ子。
ある日電化店に行った暗雲は幸菜とはぐれてしまい、時代の洪水(電化店)の中をさまよいあるくのであった。世話を焼いているのはどっちだ!?


相変わらず勢いだけであらすじを書いてしまいましたが、この認識で間違ってないといいなあと思います。
まず暗雲という名前を見た瞬間、私が思ったのは「ママン、パピー、なんて名前を子供につけるの!?」ってことでした。そんな人生まで暗い雲がかかってしまいそうな名前をつけた両親を私だったら恨むかもしれません。幸菜ちゃんの名づけ親とのギャップがあんまりだ。
ところがそんな名前の持つ魔力にも負けることなく、暗雲は現代をひたむきに生きています。
最初「御座る」という言葉が読みにくく、せめて「ござる」か「ゴザル」なら読みやすいのになあ。「おじゃる」じゃちょっと時代が違うし。とか考えていました。でも「御座る」だから彼のやたら古めかしい感じが出ているのかもしれませんね。
暗雲の髪型はちょんまげなのかしら、それとも髪型だけは明治時代の侍のように普通なのかしら。いずれにせよ「若い」と描写にあるのにがっちがちに時代に乗り遅れた暗雲の様子がただただ、描かれていて、そんな彼が電化店の中に取り残されたときの恐怖ってすごいんじゃあないかと思うわけなんですが、彼が幸菜ちゃんを探して電化店の中を歩き回るのは見ていて面白かったです。
まずデジカメ置き場がわからない。エスカレーターの近くと言われてエスカレーターがわからない! うおおおい、どこからタイムスリップしてきたの!? と思わずにはいられないです。
ところが炊飯ジャーは普段から使うせいか知っていたみたいですね。炊飯ジャーでカステラを焼く暗雲を見てみたいです。
時代の古い暗雲のことだから脳内ではカステラではなく加須底羅(かすてら)とちゃんと漢字が出てくるんだろうなあ。それともかすていらだろうか。ちょっと古風な彼がお洒落に見えてくる、何この錯覚。でもカタカナの横文字はきっとほとんどわからないんだろうな。
もうここまで読めばわかるかもしれませんが、暗雲にときめきっぱなしでした。なんだこの可愛い男! って。でもやっぱり近くにこんな無知な奴がいると苛々して幸菜ちゃんのように優しくはできないんだわ。

ほとんど幸菜ちゃんに触れずに感想が終わろうとしています。
幸菜ちゃんは5歳とは思えないほど頭がいいです。たまにこういう利発な子がいますけど、よくできすぎた子を見ると大人は「将来が楽しみだ」と思うよりも「もうちょっと子供らしくてもいいのに」と子供らしさを求めがちですよね。完璧大人のエゴです。
そんな自分と比較して、5歳の少女に頼りっぱなしな暗雲はそれも大人としてどうなの!? って気がしなくもないんですが、まあたまにそういう大人もいますよね。そういう大人に「大人になれよ」と思うのは別にエゴじゃあないと思いたい。

などなどとつらつら書きました。
短いお話なのにこんなだらだらした感想を書いてよかったのでしょうか。
最後に誤字だけ指摘して終わりにしますね。


>失敬あがら場違いともいえるかも知れないが…案の定、彼はイマドキの言葉や道具について詳しくない。
失敬ながら、「な」だと思います。これは指摘してもいいはず。


思ったことはずばずば言っていいと言われたので、めいっぱい辛口にしてやろうと思いつつ、ぜんぜん違うことをだらだらと語っただけの感想になりました。
そんな私の愛ある感想支羽様に届け!
ご依頼ありがとうございました! とても面白かったです!

月島瑠奈様「パパのおよめさん」感想

月島様、このたびはご依頼ありがとうございます。
ご依頼いただきました「パパのおよめさん」を本日拝読しました。

「パパのおよめさん」
http://lunatuki.com/text/papa/index.html


パパのおよめさんと言えば、娘が小さな頃に「あたし、パパのおよめさんになるの!」というお約束のフレーズがすぐに浮かんだわけなのですが、可愛らしい娘はいつしか他の男の元に嫁いでいってしまうんだぜ、かつてお前が自分の奥さんを貰ったときのように! とひとりでツッコミなんだかよくわからぬことを呟きつつ、さあこのお話はどんなお話なのかと読んだわけです。


あらすじ
勇人(はやと)は5歳になる亜衣(あい)と妻の美咲(みさき)と暮らすどこにでもいるサラリーマン。
会社では部下に冷たいけれども娘にはデレデレ。そんな勇人に美咲は「亜衣をそんなに甘やかさないで」と注意するのだが、ついつい優しいパパ役をしたくなる。
ある日会社から帰ってきた勇人は、美咲の鞄の中から男性モノのハンカチを見つける。とっさに浮気が頭をよぎって美咲を問い詰めるが、美咲の不満もついに爆発。
「そんなに亜衣が可愛いなら、亜衣をおよめさんにすればいいじゃない!」
そんなことを言わせたかったわけじゃあないだろう、勇人。


こんなあらすじでよろしかったでしょうか。
まずどこでも見かける光景かもしれませんが、勇人のこの奥さんに対しての無神経ぶりにしつけをやったことのある人ならば誰でも苛々します(笑)
あんたは会社のことをやっていればいいんだろうけど、家族ってのは会社のように割り切って考えられる問題じゃあないんだぜと私は美咲さんに感情移入。
すみません、会社で働いている人には会社で働いている人の苦労があると思うのですが、私の場合は家にいる時間が長いために家族関係は割り切って考えられないという気持ちが強くてこういう考えになりがちです。
勇人の言い分も頭ではわかるんですよね。会社に出てきてその髪形はなんだとか、お茶を配っている暇があったら仕事をしてほしいとか、何故に挙動不審な女が仕事場にいるんだとか、わかりたくないけれどもわかる。それって社会人として常識って考えられている部分です。
だけど人間は社会の一部だけれども社会人ってだけでなく家庭も友達も心もあるわけで、もちろんそれは勇人自身もそう。人間だから仕方がない、では社会は片付けられないけれども、だけど人間だから歯車のようには動けない。
文章の中には部下に厳しい勇人の姿しか描かれていませんが、きっと勇人自身もストレスにさらされる毎日の中でしっかり仕事をこなし、家族のため自分のためと考えてここまで成長してきたんだと思います。
丸くなるのが悪いはずがない! 大人になるのが悪いはずがない! だけど若かった頃の気持ちを忘れてないか、勇人。奥さんに初めて会ったときの気持ちとか、社会人一年目のがむしゃらだった頃とか、覚えているようで忘れて、いつの間にか今の自分の姿を正当化させるために他をしっかり見ていないんじゃあないのか。
上司のあまりきつくない、それでいて思いやりのある一言は勇人にとっても衝撃でしたが、私自身にとっても衝撃でした。
私たちは社会生活を送る上で、人を褒めたり、人に優しくしたりするよりも「これじゃあ駄目だ」とか「なっていない」とか、そういう風に責める形からスタートすることのなんと多いことでしょう。
それを考えると亜衣ちゃんに向ける勇人のやさしさがなんとなくオアシスのように感じます。
とはいえしつけという立場から考えたらそれではいけません。しっかりしつけなかった子供は社会に出てから苦労するからです。

などと、人様の家庭(作品)を見ながらしっかり感情移入してしまった私は、家庭のあり方や社会人としてのあり方、子供をしつけるってことはとても難しいんだとか、ママはママだけど妻でもあるのよ! とか、ともかく色々なことを考え、いや考えたというよりは感じながら、最後まで一気に読んでしまったわけです。
そんなに長いお話というわけでもないはずなのに、とても壮大なドラマを家庭の中に見た気がしました。
最後の亜衣ちゃんの台詞には、「やはり娘はそのフレーズを言わなくては」とニヤリとし、そしてそのあとに続く「あとでやるもん!」という言葉に、これは心してかからねばならないぞ、パピー。と勇人と美咲に心からエールを送ってしまいました。

心が温まるのとはちょっと違うけれども、家族ってなんだろうとか、色々考えるきっかけになり、なおかつ家庭のあたたかさというものに「これって当然じゃあないんだよね」と感謝せずにはいられない、結果的にはちょっと心が温まるハートフルなストーリーだと思いました。


とても面白かったです。
素敵なお話を読ませていただきありがとうございました!

恵陽様「来客御礼」の感想

恵陽様、このたびはご依頼いただきありがとうございました。
最近睡眠不足だったので少し落ち着くまで時間をいただいてしまいましたが、来客御礼を読んだらなぜか心がすっきりしてぐっすり眠れました。不思議(笑)

異世界に招待された男の子とうさんくさい中華口調のヒロインの淡く切なく、涙が出てくるようなストーリーでした。
いや、こう書くとシリアスなお話のような気にさせるんですけれども、主人公くんの気分になれば
淡く(これからの冒険に期待し)
切なく(人生の残酷さに打ち拉がれ)
涙が出てくるような(私は笑って涙が出ました)
お話でした。

さて、溜めもつくったところでハイテンションに感想をお届けしたいと思います。
恵陽様の素敵小説のアドレスはこちらです。
http://www.geocities.jp/keiyo_u/short/kyaku00.html


>この世界では机の引き出しや箪笥が異世界との通路になることもある。嫌な例を挙げれば公衆トイレだって異世界と通じたことがあると聞き及んでいる。

なんと。この短さで異世界トリップものをやってのけたのか。
私の心が弾みます。
思わず携帯の画面に前のめり。

>これは夢だ。絶対に夢だ。夢に違いない。夢じゃないのなら、アレだ。夢オチだ。

これは最初に異世界トリップした人間なら誰でも考える「なんだ夢か」というオチだと信じたい心境ですね。

>高二にもなってネコ型ロボットのアニメを欠かさず見てるから変な異世界願望が出ちまうんだ。まあ、あれは異世界じゃなくて未来だけど同じようなものだ。今度から毎週見るのはやめにして、二週に一度見ることにしよう。

なんか可愛い男の子だなあと思いました。
ある意味トリップしてきて正解だったんじゃあないの? とまで。私はひどいですね。

>神様仏様貧乏神様、誰でもいいから嘘だと言ってくれ。でも出来るなら貧乏神じゃなくて神様か仏様にお告げをもらいたい。

携帯で見ていたせいかもしれませんが、どこまで現実逃避が続くんだろうということが気になりました。
本題に入るのはいつだ? 焦らしてるんだな、私をじれじれさせてこの主人公くんは喜んでいるんだな! と都合よく解釈してさらに続きを読みます。

>……嘘じゃなかった。

パソコンであとで確認したところ、実はそんなに長いものでもなかったです。
彼の混乱が私に電波したのか、永遠のように長く感じた現実逃避は、美人な似非チャイナ少女に顔を覗き込まれて終わります。


とまあ、こんな感じで、異世界の冒険が始まるんだ! と思わせておいて、主人公くんにはとても残酷な現実が突き付けられます。
チャイナ少女のリーファちゃんは、好きな異性と両想いになるおまじないをかけました。
そしたら召喚された=リーファの好きな相手って僕!?
そんな淡い期待をぶち壊すように、彼女は笑顔で残酷なことを言います。

>「あいやー、我好きな人の名前なんて恥ずかしくて書けないあるよ。だから別のを書いたある。我の店お客さん少ないある。だから『客』って書いたあるよ」

ここまでは私、ランダムに選ばれたお客様なのだと思っていました。
主人公くんの苗字が「客」だなんて全然思っていませんでした!
この理不尽すぎる異世界召喚。私は笑いました、涙が出るほど笑いました。

召喚された理由がわかるまでにスクロールバーで半分を超えたあたりまでくるのですが、ここまで溜めに溜めておいて、これだけ盛大に裏切られるといっそすがすがしいとまで感じます。
客くんもきっとこれから始まる冒険とかに期待していたと思うんですよ。猫型ロボットを欠かさず見る子ですもの、きっと混乱しながらも内心淡い期待を抱いていたに違いありません。
それを突き落とすような現実。異世界召喚なのにあんまりだ。
いやー笑った。

手前が長かったのに、店にあるものを買ったらあっさり返してくれるというこのお手軽さもとてもおいしいです。
何のために召喚されたんだろうと思わずにはいられない。世の中の苦ずっぱさを味あわされて最高です。
そして帰った彼を待っていたのは先生のどやす声。ひどい、あんまりだ。
そして極めつけが彼女のメッセージカードに書かれた「また来るよろし」という可愛い走り書き。

>僕はその紙をびりびりと半分に破ると、窓から外に投げ捨てた。
>二度と行くものか!

同感! もう二度とあの異世界に行きたくない。(笑)
最初は入りづらいかとすら思えたストーリーなのに、最後の瞬間には主人公と同じ気持ちになっていたという罠。巧妙な罠でした。

思わず感想もいつもの1.5倍くらいハイテンションな内容になってしまったのですが、とても面白く拝読させていただきました。
これは書いていて楽しかったんだろうなーという気持ちがびんびんに伝わってきて、それがまた心地いい。

どうぞこれからも執筆活動に励んでくださいませ。
このたびは面白いお話を拝読させていただきありがとうございました。
またのご利用をお待ちしております!