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月島瑠奈様「パパのおよめさん」感想

月島様、このたびはご依頼ありがとうございます。
ご依頼いただきました「パパのおよめさん」を本日拝読しました。

「パパのおよめさん」
http://lunatuki.com/text/papa/index.html


パパのおよめさんと言えば、娘が小さな頃に「あたし、パパのおよめさんになるの!」というお約束のフレーズがすぐに浮かんだわけなのですが、可愛らしい娘はいつしか他の男の元に嫁いでいってしまうんだぜ、かつてお前が自分の奥さんを貰ったときのように! とひとりでツッコミなんだかよくわからぬことを呟きつつ、さあこのお話はどんなお話なのかと読んだわけです。


あらすじ
勇人(はやと)は5歳になる亜衣(あい)と妻の美咲(みさき)と暮らすどこにでもいるサラリーマン。
会社では部下に冷たいけれども娘にはデレデレ。そんな勇人に美咲は「亜衣をそんなに甘やかさないで」と注意するのだが、ついつい優しいパパ役をしたくなる。
ある日会社から帰ってきた勇人は、美咲の鞄の中から男性モノのハンカチを見つける。とっさに浮気が頭をよぎって美咲を問い詰めるが、美咲の不満もついに爆発。
「そんなに亜衣が可愛いなら、亜衣をおよめさんにすればいいじゃない!」
そんなことを言わせたかったわけじゃあないだろう、勇人。


こんなあらすじでよろしかったでしょうか。
まずどこでも見かける光景かもしれませんが、勇人のこの奥さんに対しての無神経ぶりにしつけをやったことのある人ならば誰でも苛々します(笑)
あんたは会社のことをやっていればいいんだろうけど、家族ってのは会社のように割り切って考えられる問題じゃあないんだぜと私は美咲さんに感情移入。
すみません、会社で働いている人には会社で働いている人の苦労があると思うのですが、私の場合は家にいる時間が長いために家族関係は割り切って考えられないという気持ちが強くてこういう考えになりがちです。
勇人の言い分も頭ではわかるんですよね。会社に出てきてその髪形はなんだとか、お茶を配っている暇があったら仕事をしてほしいとか、何故に挙動不審な女が仕事場にいるんだとか、わかりたくないけれどもわかる。それって社会人として常識って考えられている部分です。
だけど人間は社会の一部だけれども社会人ってだけでなく家庭も友達も心もあるわけで、もちろんそれは勇人自身もそう。人間だから仕方がない、では社会は片付けられないけれども、だけど人間だから歯車のようには動けない。
文章の中には部下に厳しい勇人の姿しか描かれていませんが、きっと勇人自身もストレスにさらされる毎日の中でしっかり仕事をこなし、家族のため自分のためと考えてここまで成長してきたんだと思います。
丸くなるのが悪いはずがない! 大人になるのが悪いはずがない! だけど若かった頃の気持ちを忘れてないか、勇人。奥さんに初めて会ったときの気持ちとか、社会人一年目のがむしゃらだった頃とか、覚えているようで忘れて、いつの間にか今の自分の姿を正当化させるために他をしっかり見ていないんじゃあないのか。
上司のあまりきつくない、それでいて思いやりのある一言は勇人にとっても衝撃でしたが、私自身にとっても衝撃でした。
私たちは社会生活を送る上で、人を褒めたり、人に優しくしたりするよりも「これじゃあ駄目だ」とか「なっていない」とか、そういう風に責める形からスタートすることのなんと多いことでしょう。
それを考えると亜衣ちゃんに向ける勇人のやさしさがなんとなくオアシスのように感じます。
とはいえしつけという立場から考えたらそれではいけません。しっかりしつけなかった子供は社会に出てから苦労するからです。

などと、人様の家庭(作品)を見ながらしっかり感情移入してしまった私は、家庭のあり方や社会人としてのあり方、子供をしつけるってことはとても難しいんだとか、ママはママだけど妻でもあるのよ! とか、ともかく色々なことを考え、いや考えたというよりは感じながら、最後まで一気に読んでしまったわけです。
そんなに長いお話というわけでもないはずなのに、とても壮大なドラマを家庭の中に見た気がしました。
最後の亜衣ちゃんの台詞には、「やはり娘はそのフレーズを言わなくては」とニヤリとし、そしてそのあとに続く「あとでやるもん!」という言葉に、これは心してかからねばならないぞ、パピー。と勇人と美咲に心からエールを送ってしまいました。

心が温まるのとはちょっと違うけれども、家族ってなんだろうとか、色々考えるきっかけになり、なおかつ家庭のあたたかさというものに「これって当然じゃあないんだよね」と感謝せずにはいられない、結果的にはちょっと心が温まるハートフルなストーリーだと思いました。


とても面白かったです。
素敵なお話を読ませていただきありがとうございました!

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