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恵陽さん、「銀杏に託して」

恵陽さんのサイト
http://www.geocities.jp/keiyo_u/top.html

「銀杏に託して」
http://www.geocities.jp/keiyo_u/kikaku/3rd/free-1.html


あらすじ

こんなSFみたいなことがあってたまるか。チャンスは一度しかないと言われて従うほかなかった。大切な親友と別れてまだ一週間。だけど今は、すべてが遠い昔のこと――


感想(ネタバレ)

銀杏が長生きな木だということは知りませんでしたが、考えてみたらでっかいイチョウの木がよく神木として立ってますね。深雪と多佳子ちゃんはちょっと多佳子ちゃんのほうが幼いイメージ。違うかな、深雪ちゃんが大人っぽすぎるんですね。ともかくいつも深雪ちゃんに心をたすけられる多佳子ちゃんが、未来に戻る前に彼女とつくった思い出の話。
実際にこんな話があったら信じられないと言う人が多いと思うんですが、深雪ちゃんはいつでも素直に真剣に話を聞いてくれる人。馬鹿にしないで、常識にとらわれないで、まっすぐな視線の持ち主なんだなって思いました。そんな深雪ちゃんだからこそ、小学生の頃からエキセントリックなことをいっぱい言っていただろう(当然未来からきたわけだしね!)多佳子ちゃんの理解者になれたのだと思います。
時間は一瞬にして過ぎ去り、だけど感情はまだ過ぎ去るには時間がかかる。悲しいなあと思っても、生きる世界がそもそも違った人たちが交わってしまったのだから仕方がない。そうは思っても心を通わせたものがなかったことになるわけじゃあないしね。
心は時間を超えるものだけれど、私は銀杏が時間を超えたんじゃあないと思っています。深雪ちゃんと多佳子ちゃんの心が時間や空間を飛び越えて繋がれたから、だから銀杏に意味がでてきたんじゃあないかなって。
これから過去の時代で生活していた多佳子ちゃんにとって、未来の時代でまた笑われたりすることもあるかもだけれど、そのときは深雪ちゃんの笑顔を思い出してほしいと思います。めまぐるしい変化の中で、変わらないものもあるんだよね。そういうお話だとかんじました。
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望月様、「マリオネットが見た夢は」

望月様のサイト
http://braveofstationery.web.fc2.com/

「マリオネットが見た夢は」
http://braveofstationery.web.fc2.com/text/h-marionette/marionette-menu.html


あらすじ

魔荒らしレグルスは研究所の奥で人形の少女を発見する。
「お前は俺が"生かして"やる……だからお前も、"自分"を創るんだ」


感想(ネタバレあり)

生かしておいた存在に生かされていた、意味を見出せといった存在によって意味を見出していた。そんなレグルスのストーリーだと感じる。
人形のミレアは人形であると同時に人間でもある。人と人形の境界線はどこから? オリジナルでないと人間じゃあないのかしら。ミレアは十分人間らしいと感じる。明らかに悪とわかっていても、大切な人を選ぶ。自分を大切にしてくれる人よりも、自分が大切な人を選ぶ。アルフといっしょにいたほうが幸せになれるはずなのにレグルスを選んじゃうんだもんなあ。
最後のほうで出てきた階層の存在の意味は私もよくはわかっていないのですが、世界の調停者みたいな存在なのかなと思っています。魔道の法則の概念みたいなものなのかなって。ここらへんの設定もいつか煮詰めてほしい、わくわくキーワードです。
もう一作読ませていただいた作品も含め、望月さんの作品は正直、もうちょっと細かくかみくだいて、ボリュームが欲しいかんじもする、荒削りで歯ごたえのあるストーリーです。しかしところどころセリフ回しや望月さんの描きたいだろう世界観、そんなものになんかすごく惹きつけられるものを感じます。技術で書いているというよりセンスで書いているイメージ。技術が磨かれればきっとすごく面白い話を書く人なんだろうなっていう、そんな可能性がひかってるお話でした。次回作が楽しみです!

抹香さん、「あまいゆめ」


抹香様のサイト
http://physeter.rulez.jp/index.html

「あまいゆめ」 BL!
http://physeter.rulez.jp/novel/amo/amaiyume.html


あらすじ

ヨウは異世界にやってきてから三年経つ。この国では男も妊娠して子供を産めるらしい。国王リーディルの子を腹に宿し、あともう少しで出産するというとき、ヨウは現実の世界で目を覚ます――


感想

ネタバレしたいけれどもネタバレせずに書けるのか。実は抹香さんにネタバレはうかがっていたのですが、それでも腐女子な私は国王リーディルとヨウのあまあまきゃっきゃうふふな毎日をまったりと眺めていました。なるほど、こんな夢ならば目覚めたくもなくなりますね。理想の男、理想の取り巻き、波乱万丈な世界の中で自分を愛し貫いてくれるなんて夢のよう……とまではいいませんが、目覚めたくもなくなると思います。
ネタバレはしませんが、したいけど、しませんが! じっくり最後のオチを読んでもらうことをオススメします。はげしくオススメします! このあまいあまーい夢の裏側にある虎視眈々とした怖い現実をぜひ。こういう異世界トリップもあっていいと思います。むしろこの作品に会えてよかった! こんなにも冷たく甘い物語があっていいんでしょうか。めちゃくちゃ鳥肌がたつような凍える甘さがめっちゃいいです。サブイボがたつという意味ではありません、いい意味で鳥肌がたちます。
惜しむらくはBLということです。私のような腐女子からすると美味しくいただけるしろものなのですが、読む人を選びそう。このなんともいえない恐怖を他の人にも味わってもらいたいのに!
そんな褒めてるんだかけなしてるんだかわからない感想ですが、私はこの作品大好きです。抹香さんありがとうございました!

東堂燦さん、「花蓋の檻」

燦さんのサイト
http://snowsheep.sakura.ne.jp/index.html

「花蓋の檻」
http://snowsheep.sakura.ne.jp/main/kagai/epilogue.html


あらすじ

レーナとヨエルは愛を誓い合っていた。その国にはお伽話がある。騎士と姫君が結ばれる日、魔術師が騎士を殺して姫君を幽閉したという話が。レーナがヨエルと結ばれるはずだった日、迎えにきたのは彼ではなかった――


感想

最近燦さんのことを「バッドエンドのさっちゃん」と呼ぼうかなと思っている。もしくは「殺戮のさっちゃん」中二病っぽくてなかなかいいネーミングだと思うの。
そんな冗談はさておき、花蓋の檻は私にとってはツボな話でした。さくもさんが「月虹彼方が好きならばぜひオススメです!」って言っていて、気になってブックマークしていたところに依頼がきたのでうほほーいと読ませていただきました。
魔術師の執念の愛、騎士の博愛――姫君が欲しかったのはただ一人に愛してもらうことだったはずなのに、ただ一人を愛していた魔術師は残念な行動に出てしまう。すべては自分が選ばれなかったがために。でも魔術師の気持ちはよくわかるんですよね。騎士と姫君が仲睦まじくしているところを、傍らで微笑んでいる、かつての魔術師の、寂しそうな頬笑みが見えるような気がしました。
姫君がそんな魔術師を、すべて自分から奪い去った魔術師を最後は許しておだやかな気持ちになったように、レーナも内争が激化して彼女を迎えにくることができなかったヨエルを許した。
燦さんのお話は、悲しい物語のはずなのに最後は丸ごと全部抱きしめちゃうような、そういう優しさが好きです。葛藤も大きかっただろう彼女たちの心に穏やかな日々が戻りますように。そう願わずにはいられない、物悲しいけれども愛おしい、はるか遠い国の物語でした。

ユキモトさん、「ぬいぐるみ派遣協会」 感想

ユキモトさんのサイト
http://snowbook.6.ql.bz/

「ぬいぐるみ派遣協会」
http://ratebra.web.fc2.com/nuikyou.html


あらすじ

僕らは意思をもったぬいぐるみ。持ち主の苦しみはぬいぐるみの苦しみ、持ち主の喜びはぬいぐるみの喜び。統括と呼ばれるぬいぐるみを中心に、意思をもったぬいぐるみたちと、所有者である人たちのちょっと悲しく、そしてやさしいストーリー。


感想

ユキモトさんのぬいぐるみ派遣協会は昔読ませていただいたことがあったのですが、終わりを見ることなくmixiを退会してしまったので気になっていた作品でした。
統括こととんかつ。私はとんかつのほうが好きです。リカの周りに4体もの意思をもった人形たちが集まり、リカの寂しい心を慰める。リカに呼び寄せられたのかな? それともリカが彼らの心に呼び寄せられたのかしら。
ぬいぐるみって捨てるのもちょっとなと思うくらいつぶらな顔していて、置いていくのもちょっとなと躊躇して、のように扱いに困る私なのですが、リカはぬいぐるみが好きなよう。リカが寂しいからというのもあるけれども、私個人的には人間のようにレスポンスしないのがいいと感じているんじゃあないかという深読みをしたり。リカはきっと普通にただ、受け止めてもらいたいだけなんですよね。感受性の豊かな彼女は、心のスペックに感情が追いつかない。本当はハルヤにヘルプしたかったんだけれどもそれもうまくいかない。
持ち主の幸せがぬいぐるみの幸せ、って主体性がないように聞こえるけれども、ぬいぐるみに主体性がないからこそ人間は癒されるのかもしれない。そんなことを考えさせられる作品でした。