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比紗由様 「花、落つる」

比紗由さんのサイト
http://sorairosonoiro.web.fc2.com/index.html

「花、落つる」
http://sorairosonoiro.web.fc2.com/hanaot.html


あらすじ
百合は剣道場の娘。ある日酔った父が娘と道場を商品に腕試しを開催すると言い出す。
集まった若者の中で百合に挨拶しない若者がひとり。蚊の鳴くような声でしゃべることから、蚊三郎と呼ばれている男だった。

感想(ネタバレあり)
蚊三郎と幸せになるんだろうなあと思っていたらおわあああああ! と中盤までいったところで裏切られた気分。花三郎、そりゃないぞなと思った。彼が最期に百合に残したお願いごとが、句帳を見ないでほしいとのこと。最後の最後まで恥ずかしがりやさん。花三郎が亡くなったあとの夫婦のエピソードが、彼らの悲しみを如実に語っているようで、せつないなあ、はあ……とため息の出るようなお話でした。
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八束様 「物言ふ魚の夢」

八束さんのサイト
http://www.geocities.jp/akari23432/heihe/xxxxxiriguti.html

「物言ふ魚の夢」
http://www.geocities.jp/akari23432/heihe/monoihu.html


あらすじ

潮の匂いがした。花世(はなよ)は海の中に続く洞窟を見つけて探検に入る。そこで一匹の魚を見つけて……


感想

描写がともかく綺麗。というか好み。本当に潮騒の音がしてきそうな、それでいて静かさが伝わってくるような描写。花世が海の中の洞窟を行って戻ってくるだけの話なのですが、私はこのお話の雰囲気が好きです。
文体で好みな人ってなかなか見つからないのですが、八束さんの文章はそーめんのようにつるつるいただけました。
他の作品もぜひ読んでみたいと思えたので、この作品は良質な短編なのだと思います。

桐原さくも様 「からふる、ぱれっと。」

桐原さくもさんのサイト
http://kotokaze.chu.jp/

「からふる、ぱれっと。」
http://kotokaze.chu.jp/tiny-story/-index.html


あらすじ

なんとなく死にたくなってみたり、ふいに得体の知れない感情に支配されそうになったり。
誰にも触られたくないのに、ひどくぬくもりが欲しくなる、そんな毎日。
不安定な少年少女の日常を描く短編集。


感想

「せんろむこうの、わらうねこ。」まで読みました。
「からふる、ぱれっと。」はいつかは読もうと思っていた短篇集。なんともこのタイトルの語呂が私のツボなセンスなのです。
ストーリーのほうは少年少女時代にいかにも考えそうな、死にまつわるお話が今のところ多め。生きづらいと感じる時期だよなあ、あの頃って。と思うと同時に、作中に出てくるハッとさせられるような表現に驚く。

「黒江。わたしたちの手には、まだ水かきが残ってるんだよ」

アキアカネが、相変わらず飛んでいた。
十色を追いかけながら――落ちずに飛ぶことが出来る奴らはすげえと思った。

こういう表現力ってぜひ私も欲しいなと感じる。
そういえばそうだな! と感じるものを絶妙なタイミングでいれてくれるのでさくもさんの小説は好きです。
この作品はイッキ読みしたいというよりは、少しずつ時間をかけて読みたい感じのお話だと感じました。だから後半はとっておいてるのですよ、ふふふ。一気に読むのがもったいないと感じてしまう余韻を楽しむためのお話です。

東堂燦様 「月虹彼方」

東堂燦さんのサイト
http://snowsheep.sakura.ne.jp/index.html

「月虹彼方」
http://snowsheep.sakura.ne.jp/main/kanata/kanata.html


あらすじ

皇族の「影」として仕える真朱。片翼の皇子青嵐は月に焦がれる。皇子の孤独が、真朱の孤独を癒し、真朱の孤独が青嵐皇子の孤独を癒した。


感想(ネタバレ)

片翼の青嵐皇子と死のカウントダウンをする従者真朱の淡くストイックな恋物語。
最初から最後までストイックの一言に尽きると思います。こんなにお互いのことを信頼しあってるのに二人とも徹底して主従関係! って感じでした。
でしゃばらないし、デレないし。だから終盤にかけて髪飾りを買い与えた青嵐のシーンで、展開は予想できたにも関わらず「やっとデレたな。長かった、長かったよ!」と思いました。
なんというかこの小説のえらいところは、真朱がブレてないところなんですよね。死のうと思ったときも、青嵐に恋心を抱いたときも、父親に真相を聞いて殺すシーンでも、最期のお別れのシーンでも、感情の起伏や迷いなんかはあったとしても最初から最後まで徹底して真朱という主人公が描かれきっていると思う。
正直最初のあたりを読んでるときは、根暗な主人公だな、とか、青嵐のほうも暴君だな、とか思いながら読んでいたのですけれども、じわりじわりと真朱の孤独な心が同じく孤独な心の闇に光の矢を放ったんだなって感じて、本当に途中から喉乾いても飲み物つがずに画面見つめて読んでました。
子供っぽい青嵐が年月を重ねるにつれて大人になり、同じく最初はふてくされていた真朱が年をかさねるにつれてどんどん抜身の刀のように鋭く研ぎ澄まされてく様は刺し違えてこのまま二人心中するんじゃあないかってくらいギラギラしていてよかった。
ここまでお互いを必死で必要としているのに、どっちも負けず嫌いというかお互いの心に対して踏み込むまいという、相手に対してというより自分への意地みたいなのは本当読んでいて「くっついちまえよ! 駆け落ちしろよ! あんたらどう考えたって両思いだから!」と応援してしまったのに、最後の最後まで、まあこれは燦さんの話だからと思っていたので予想はついていたのですが、糖分めっちゃ控えめで死に至るという結論。
なんとなく冒頭読み始めたあたりからこのヒロイン、燦さんのことだから絶対死亡フラグだよなと思っていたはずなのにお別れのシーンで視界がブレるほどうるっときてしまって、ああ、これがハートキラー燦の揺さぶりの魔法なのですねと思わずにはいられないほどぐっときてしまいました。
クライマックスひたすら自室で盛り上がって読んだあとだったから、ラストの「片翼はお前だったのに」ってくだりがもうガクガクきて、最後は切なく余韻が残る感じで終わったなと感じます。

月島瑠奈様 「とりあえず、ゲンジツ。」

月島瑠奈様サイト
http://luna.boo.jp/

「とりあえず、ゲンジツ。」
http://luna.ehoh.net/text/ss/ss4.html



あらすじ

失恋した“私”は景気付けのために寿司屋に出かける。
何もかもが斜めに構えて見てしまう午後、友達からメールがきていた。


感想

とりあえず、ゲンジツ。というタイトルどおり、とりあえず、現実が優先するお話です。
まったく現実逃避している暇もないやと読み終わったあとに思わず苦笑い。
でも、悲嘆に暮れている時間があったらどれだけでも人間は悲嘆に暮れていそう。彼女に限らずね。
とりあえず、ゲンジツ。現実が別の現実を忘れさせてくれたり悲しみを後回しにさせてくれるなんてことはよくあることですよね。
短いお話なのに、よくあることだなと感じてしまう掌編でした。