東堂燦様 「月虹彼方」 東堂燦さんのサイト http://snowsheep.sakura.ne.jp/index.html 「月虹彼方」 http://snowsheep.sakura.ne.jp/main/kanata/kanata.html あらすじ 皇族の「影」として仕える真朱。片翼の皇子青嵐は月に焦がれる。皇子の孤独が、真朱の孤独を癒し、真朱の孤独が青嵐皇子の孤独を癒した。 感想(ネタバレ) 片翼の青嵐皇子と死のカウントダウンをする従者真朱の淡くストイックな恋物語。 最初から最後までストイックの一言に尽きると思います。こんなにお互いのことを信頼しあってるのに二人とも徹底して主従関係! って感じでした。 でしゃばらないし、デレないし。だから終盤にかけて髪飾りを買い与えた青嵐のシーンで、展開は予想できたにも関わらず「やっとデレたな。長かった、長かったよ!」と思いました。 なんというかこの小説のえらいところは、真朱がブレてないところなんですよね。死のうと思ったときも、青嵐に恋心を抱いたときも、父親に真相を聞いて殺すシーンでも、最期のお別れのシーンでも、感情の起伏や迷いなんかはあったとしても最初から最後まで徹底して真朱という主人公が描かれきっていると思う。 正直最初のあたりを読んでるときは、根暗な主人公だな、とか、青嵐のほうも暴君だな、とか思いながら読んでいたのですけれども、じわりじわりと真朱の孤独な心が同じく孤独な心の闇に光の矢を放ったんだなって感じて、本当に途中から喉乾いても飲み物つがずに画面見つめて読んでました。 子供っぽい青嵐が年月を重ねるにつれて大人になり、同じく最初はふてくされていた真朱が年をかさねるにつれてどんどん抜身の刀のように鋭く研ぎ澄まされてく様は刺し違えてこのまま二人心中するんじゃあないかってくらいギラギラしていてよかった。 ここまでお互いを必死で必要としているのに、どっちも負けず嫌いというかお互いの心に対して踏み込むまいという、相手に対してというより自分への意地みたいなのは本当読んでいて「くっついちまえよ! 駆け落ちしろよ! あんたらどう考えたって両思いだから!」と応援してしまったのに、最後の最後まで、まあこれは燦さんの話だからと思っていたので予想はついていたのですが、糖分めっちゃ控えめで死に至るという結論。 なんとなく冒頭読み始めたあたりからこのヒロイン、燦さんのことだから絶対死亡フラグだよなと思っていたはずなのにお別れのシーンで視界がブレるほどうるっときてしまって、ああ、これがハートキラー燦の揺さぶりの魔法なのですねと思わずにはいられないほどぐっときてしまいました。 クライマックスひたすら自室で盛り上がって読んだあとだったから、ラストの「片翼はお前だったのに」ってくだりがもうガクガクきて、最後は切なく余韻が残る感じで終わったなと感じます。 PR