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フジイナオキ様「イコとマナ」 感想

フジイナオキ様のサイト
http://fujiinaoki.web.fc2.com/novel_web/

「イコとマナ」
http://fujiinaoki.web.fc2.com/novel_web/ss/ikotomana01.html

あらすじ

……は書くと面白くなさそうなので今回は割愛。


感想

イコとマナ。ファンタジー初挑戦と聞きまして、なんとなく中世ヨーロッパのような世界観に剣と魔法みたいな偏見がありました。
ところがどっこい、イコとマナのフィールドは延々と続くカラフルな階段、登場するキャラクタも人外……どころかよくわからない生物ばかりなのです。
あとがきに「ファンタジーで想像するのはムーミンみたいな世界」と書いてあって納得がいきました。たしかにそんな感じの、不思議な世界観でした。
途中何度も出てくる「逆子」という事あの説明がされていないことに、やや不気味さを感じながら、最後まで読むうちに嫌な予感が広がる。もしかしてここは死にかけの子供たちの世界なんじゃ……?
最後はマナのことを思い出しているイコのシーンで終わりますが、死ぬと明確に書かれているわけでもないのに、漠然と不安の広がる作品でした。
レイアウトで行間がもうちょっと開いていたら読み易かったかも。
一般的なファンタジーというよりも、この世の理――死と生についての小さなお話というのが私の感想です。ファンタジーではないと言いたいわけではなく、これはこれでファンタジーなのですが、幻想的というよりいも儚いイメージのほうが強かった。
不思議な作品だったので、感想を書くまでに自分の思考をまとめるのに相当時間がかかりました。
ですが読めてよかったと思いますし、他の人にもオススメしたい作品のひとつです。
命の生まれる不思議、死んでゆく不思議。不思議なお話でした。ありがとうございました。
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染井六郎さん、「君のための童話」「僕と彼と生と死と」「春憂」他二本 感想

染井さんのサイト
http://ikasamaya.daa.jp/

「君のための童話」(以下、同性愛・暴力描写注意)
http://ikasamaya.daa.jp/novel/kiminotameno/akira.html

「僕と彼と生と死と」
http://ikasamaya.daa.jp/novel/bokukare/bokukare.html

「春憂」
http://ikasamaya.daa.jp/novel/yutaka/menu.html


あらすじ
彼らのことは彼らに聞いてみるべきだ。彼らの愛は、彼らの純粋な愛の形だ。
彼らは人生に失敗している。だけど愛することに成功している。
これは歪んでいる彼らが、愛を見つけるための物語。やさしい彼らが、自分を愛するまでのストーリー。

恵陽さん、「教室の裏側」

恵陽さんのサイト
http://www.geocities.jp/keiyo_u/top.html

「教室の裏側」
http://www.geocities.jp/keiyo_u/uragawa.html

あらすじ
高校生の時間は長くて短い。恋に友情に喧嘩にお祭り。その毎日が楽しかった。(本作紹介より抜粋)


感想
どこから読み始めても読めますよと書いてあるとおり、どこから読んでも楽しめます。でもいちおう春夏秋冬の順番に読んでいきました。なんというか冒頭に書いてあるとおりのことが恵陽さんの書きたかったことずばりなんじゃないかなって気がしました。
高校生の時間は長くて短い。たしかにそうだ。
恋に友情に喧嘩にお祭り。本当行事が絶えなかったです。
その毎日が楽しかった。ええ、本当に。

どこかで美化されたりデフォルメされたりしつつも、あの時代特有のきらきらした思い出っていうのはいつまでも胸のどこかに残り続けるものですよね。
私が一番好きだったのは写真部の男の子と、部長の話。つまらないなーと思っていた毎日の瞬間を切り取ったようなのに、なぜかそう言われた言葉って大人になったずっとあとにも残ってそう。何気ない日常のワンシーンを切り取るのが恵陽さんは上手です。
ドラマチックというほど事件にあふれていたわけではないけれども、それでも毎日が新しい発見があったあの頃を思い出せる、素敵な掌編集だと思いました。

東堂燦さん、「心中は泡沫の夜に」

燦さんのサイト
http://snowsheep.sakura.ne.jp

「心中は泡沫の夜に」
http://snowsheep.sakura.ne.jp/main/utakata/utakata.html

あらすじ
足の不自由な語り部の「わたし」。そんなわたしを土曜日に必ず訪ねてくれるやさしい「青年」。いつしか青年に恋心を抱くようになったわたしは、ある日海を見に行きたいと青年に言った。

感想
参考文献にアンデルセンがあるように、物語自体もまるで異国の童話のような雰囲気でした。
あるところに可哀想な女の子がいて、その女の子に優しくしてくれる王子様がいて。しかしその幸せは長くは続かなかった……のような。
言葉が適切ではないかもしれませんが、浮かんだ言葉が「虚実の悲劇」って感じでした。
人によっては「現実味のない感情、陰惨さ」と感じるかもしれません。私もどこかで作られた悲劇――それこそお伽話のお姫様がひどい目にあったような気分を味わいました。
だけど彼女にとっての悲劇は煙草の火を押し付けてくる父親でも、殴ってくる母親でもないのです。もちろん足を失い、両親を失ったことでもない。愛が得られない、愛する人から庇護欲以上の感情を得ることができない上に、自分は彼のために何もしてあげられない存在だという無力感こそが彼女にとっての悲劇なのです。
お伽話はね、いつも綺麗なところでお話が終わるけれども、もしお伽話のお姫様の感情をどっぷり書いたらこんな作品になるのかな? と思いました。物語のために作られた悲劇、その運命から逃れられないお姫様たち、私たちが彼女たちを物語として見ているように、物語の中から彼女たちは私たちを見上げているのかもしれない。
「最後にどう評価するかなんて関係ないの。これがわたし。わたしの感じ方だったの」
そんな印象を受けた。主人公の「わたし」の悲しみや辛さが、出来上がりすぎた悲劇よりもずっと私の胸には突き刺さりました。

結月彼方さん、「おおかみとりゅう」

かなたさんのサイト
http://specimen.my-pocket.net/

「おおかみとりゅう」
http://specimen.my-pocket.net/index.php/page/short/01


あらすじ
黒い竜には二人の子供がおりました。一人は白い狼の子、もう一人は黒い狼の子。あるとき竜は遊んでばかりいる二人の子に「国を守るように」仰せつかいました。遊んでばかりいた彼らはもちろん国の守り方なんて知るわけもありません。

感想
童話とか寓話って一言で言っちゃうとなんか寂しいなって感じがするのですが、はるか遠いどこかの国の伝説に本当に残ってそうなお話。しかもそのはるか遠い国っていうのは地球のどこかでなく、私たちと違う暮らしをしている別の世界のどこかのお話って感じなんです。
黒い狼、白い狼がこのあとどうなったかが気になるなあと思ったら続きがあるとか言われてきゃっほーい! でした。かなたさんのお話は世界観が凝縮しているというか、世界観って言葉を使うよりも風俗が凝縮しているというか、本当にこういう世界でこういう人たちが生活しているんだなっていうのが分かるのがすごく見ていて楽しいです。
白い狼は黒い狼と自分がずっと遊んでいられるように知恵をしぼったのにそれが思うような結果にならなくて残念だなと思いました。でもどこかで傷つき、そこから何か学んだり誓ったりするのが人も竜も狼もなのかもしれません。
とても面白い物語をありがとうございます。かなたさんのお話に会えて幸せです。