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最近読んだ本

ラブリーボーン / アリス・シーボルト (再読)

再読して思ったことは、やっぱり同じだった。
「現実ってきっとこんな感じなのだろうな」という落胆と、リアリティのある子供が殺された家庭のその後で、家族がそれぞれを立て直す過程。何度見ても、殺人で当たり前のように続くはずだった平凡が打ち砕かれるとこうなるんだろうなって感想に戻ってくる。
いつかは書きたい世界だったなーと思ったけれども、正直この作者が書きたかったことは全部書いてくれた気がするしこれよりも秀逸なものが書ける気がしない。
死んだスージーの視線で生きている家族や友人、殺したハーヴェイを見つめるとなんともいえない無力さを感じたり、忘れられる寂しさを感じたりする。
印象的だったのは畑仕事をするのに末の弟がスージーの服を使おうとして、お父さんが止めるシーン。弟にとってはもうそれにとらわれるのはうんざりなのに、お父さんからしたらいつまでもスージーはスージーのまま。死んだ娘、じゃあなく娘のスージーなんだよね。
どんどんスージーを過去の人物と割り切る生きている人たちの中で、あの日あの瞬間に取り残されたお父さん。
だけどスージーはお父さんが今でも愛してくれている、忘れていないという気持ちだけで他のいろいろを許したり忘れたりできる。のようなスージーの一人称で書かれているところに、やっぱり忘れられたくないよねって気持ちでいっぱいになったり。
何が正しいと割り切れないけれども、現実はきっとこんなのだ。




詐欺師のすべて / 久保博司

面白いなと思った。そう思ったのは、書き方が引き込まれる書き方だということ。
あとからわかったことだけれど、この作者さんは小説家のようです。別の本でパラ見したのが詐欺師の事件例をだらだらあげてあるやつで、リサーチにはなっても読み物としてはひたすらつまらなかった記憶があったのですが、これは詐欺師の忘れたらいけない十五箇条みたいな感じで詐欺師の立場からも騙される立場からも検証する立場からもなるほど! と思えるような書き方してあるからきっと面白かったのだと思う。
今のところ読んでる詐欺師系列の本の中じゃ実際に詐欺のお話を書くときに心がけるポイント集みたいな感じ。
詐欺のお話を書こうと思っている人は中古だと安いので、お手にとって見ることをオススメします。




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10月読んだ本

怖るべき子供たち / ジャン・コクトー

読み始めてすぐにダルジュロ×ポールとかいう言葉が浮かんだ私ですが、読みすすめているうちにガチでその展開なんじゃないかと疑って後ろのあらすじを読むと……

未開で新鮮、善悪を識別することのできない子供たち。同性愛、盗み、虚偽、毒薬……無作為な混沌と不安定な精神がやがて情熱へと発展し悲劇的な死にいたるまでの姿を鋭利な刃物のような言葉で描く小説詩

と説明が。
なんだ、なんか好みな単語がいっぱい並んでいるけれども怖そうなお話だな。ドキドキと思いつつ読み進めました。
結論から言うとエリザベートとポールの気狂いっぷりがね! こいつら子供とかそんな可愛いカテゴライズじゃないよ。子供だから分別がつかないんじゃなくて犯罪と空想の区別がつかないから悲劇が起こったんだよ。
ダルジュロが「そうそう、今でも毒薬は好きなのかい?」と聞くシーン、本気で震え上がった。なんだよ、少年たちの秘密って可愛らしいBLを期待してたのに毒薬蒐集ってどんだけ猟奇的なんだよ!
震え上がってたけれども笑ってもいました。主にポールがずっとマジキチモードなので、彼がヒステリーを起こして妄言をしだすのを見ながら「こいつどこまで落ちぶれるんだろう」ってひどい他人モードな気持ちで。親友のジェラールの気持ちだったりしたらそんなのじゃすまなかっただろうけれども。
狂気が好きな人にはオススメな一冊かもしれない。本当に狂ってる人ってのはこんな感じだ。




魔法の習慣 / はづき虹映

わかりやすく数秘術がまとめてある本が欲しくて買った一冊。
はづき先生のスケジュール帳を今年使っていたのですが、本当に書いてあるとおりのことがその月に起こるんですよね。当たる占い師って言われてるけれども個人セッションもしてないのに恐ろしいですたい。
中身は31日の習慣にするとよいことと、数秘術の説明でした。わかりやすく、何より実践しなければ理論は役に立たないということがわかる書き方で、実際に実践できるかどうかが大切だとはづき先生も書いています。
今のところできているのは靴を揃える程度だけど、言われてみれば子供の頃は靴を揃えること当たり前だったのにいつからしなくなったんだろうなと思った。




薬指の標本 / 小川洋子

小川洋子さんにはまったきっかけはたしか「博士の愛した数式」だったと思うのですが、同じ人が書いたんだろうかってくらい怖かった。怖かったというか、不気味だった。
私、自分で言うのもなんですがフェチが好きです。パーツ萌えです。ということで誰かにオススメされたこともあったような気がするけれども、まず冒頭で薬指が欠けてサイダーが血に染まる描写でリアルに血の味サイダーを想像して飲んでいたお茶を遠ざけた。
あと弟子丸さん怖いし、彼がプレゼントする靴とかぴったりのサイズとか、靴に足が呑まれるというエピソードよりもずっとずっと怖くないか。怖いよね、標本マニアが自分の足に見事フィットした靴プレゼントしてくるんだよ! めちゃくちゃ怖いよ。
何が怖いってこの倒錯的な世界に誰も突っ込まずにずっとお話が進んでいくいびつさだよね。ねーわ、ねーわって何度も口にしたくなるのに、サエない弟子丸さんに主人公の女の子ぞっこんなんだもの。ねーわ。




トキさん「少女と王子と本の騎士」 感想

トキさんのサイト
わかりません。教えてくれたらURLを貼ります。

「少女と王子と本の騎士」のページ
http://ncode.syosetu.com/n2370bb/

あらすじ
フィオレンツァは司書の見習い。王子様のような見た目の上司ヴィエリと、平凡な性格平凡な容姿の王子様クラウディオといっしょに平和に城で暮らしている。そんなある日、クラウ王子が露店で見つけてきた聖書の写本。冒険と恋の始まりだた。

感想(ネタバレしまくりです)

庶民派王子と庶民女子の庶民的ロマンチック冒険。のような印象でした。
いやあ、クラウディオ王子ともかく素敵。なんというか、飾ってない、気取ってない、とっつきやすいところがとてもいいです。
フィオレンツァにしてみればロマンチックとは言いがたいのだろうけれど、第三王子がとっつきやすい性格でお忍びで城下町でフルーツ買ってくれたり、露店からおみやげ持ってきてくれたり、お見合いで出かけた異国で夜中に城をいっしょに抜け出して夜食を食べにいったりとか……ロマンチックですよねえええええ!!!
なんというかクラウディオが17歳にしては子供っぽいところとか、フィオレンツァが恋に対して奥手なところとか、釣り合ってるんだけれども恋より食い気、キスよりもいっしょに馬鹿やっていたいって雰囲気がもう可愛くて可愛くて。
この二人、将来もっと大人になったときは落ち着きも出てくるんだろうけれどもこの冒険とか、お互い漫才のような会話ばかりしていた頃の記憶ってすごくいい思い出になるんだろうなって思います。初恋の相手がそのまま好きってケースは少ないけれど、この二人は恋って感情が消えてもお互いを大切にできるって感じがします。出来ることならこのまま熱も冷めずにゴールインしてくれれば! と思わずにはいられない。
そしてヴィエリさん。あまりの万能っぷりに思わず最初、実は海賊一味にヴィエリが加担しているとかいう裏切りを期待してしまいましたが、最後まであなたは騎士でした! ただし箒で戦う騎士ですが。
ヴィエリはクラウディオとフィオレンツァのかなり奥手な恋をどう思ってるのかしら~? と考えましたが、あんま実は関心がないというか、そこらへんに関与するつもりはなさそうだなと思ったり。誰に恋するかは二人の問題だと思ってそうですね。

トキさんより気になった点があれば……とのことだったので、ひとつだけ。
庶民派王子乙女コンビがボケたやりとりをしすぎて物語全体が少しピンぼけしてしまっている気がします。いや、彼らのテンションは常にこんな感じだということはよくわかるのですが、全体的にメリハリがもうちょっとつくと面白さが際立つのかな? という気がしました。
トキさんが気にしていた主人公の印象の薄さなどは特に気にならなかったです。十分親しみが感じられる性格だったと思うし、庶民派王子にはこれくらいの女の子でいい気がするのです。私もおばちゃんだというのに
「いいわあ、年が16だったらクラウディオ王子といっしょに城下町散歩したかったわ」
とか思うくらいでしたから、そう思ってくれる読者は少なくないと思います。
お料理で言うならば「あの調味料が足りない、この調味料が足りない」というよりも「味がしまってない」のが決め手に欠けるんじゃあないかなと思いました。
料理もさじ加減がぴったりだと味がぴしっと決まります。具材のクラウディオ王子やフィオレンツァ、ヴィエリ、海の冒険などはいい出汁が出ているので、あとは味付けの物語、具体的に言うならばセリフの量やまとめかたにもう少しメリハリがつけば文句ないなあと個人的には思いました。


とはいえ、オンノベとしてはとても面白かったです。とても楽しめました。
感想を書くのがとても遅れてしまってすみません。これに懲りずまた依頼してくれると嬉しいです。ありがとうございました!

兵藤さつき様 「天青詞華」感想

兵藤さつきさんのサイト
http://www.peve.org/index.html

「天青詞華」
http://www.peve.org/tensei/tensei.htm

あらすじ
兄と喧嘩した直後、鈴花は気づいたら名前も知らない異国にいた。その国で出会った二人の若者。一人は荒くれ者で不器用な男、一人は優雅でおだやかな男。しかしそんな二人に取り合いされながらも、鈴花が願うのはひとつだった。
つまるところ「家に帰りたい!」その国においての女性の常識は、鈴花にとって耐えられるものではなかった。

感想
あらすじがうまくまとまらなかったのですが、このお話は涙腺ブレイカーです。
第四章あたりまで読んで、何故か思考がストップしたのでしばらく読まずにいました。今日読んでも平気そうなテンションだったので最後まで読んだのですが、四章から先は何度も目が潤み、そして最後のほうでは泣きながら次のページボタンを押すのですが、眼鏡が涙で曇って見えなくてつらかったです。
ヨンヤンのお姉さんの怒りの言葉。「私はこの国で誰よりも偉い女になってやる。必ず男の子を産んで皇帝にしてやる!」って本当に怒りが凝縮してますよね。この言葉を聞いたときになんというか、私の背筋には彼女の怒りが通り抜けたような気がしました。この国においての女性の運命に、彼女は精一杯信念を貫いたのだと思います。格好いい女性だという一方で、そんな彼女ですらこういう形でしか成功できないというものに悲しさを覚えたのがまず最初の涙腺ブレイクでした。
そこから先、どこでブレイクしたのか覚えていません。何度もブレイクしました。なんで涙が出たのか明確な理由はありません。感動するというより、悲しくて泣いたんです。ともかく悲しい、悲しみの上にできたストーリーでした。登場人物たちは悲しさの中でもがきながら、それでも何か一抹の希望のようなものを手繰り寄せようとがんばっている。こういう社会もあるんだ、これは他人ごとじゃなくてもしかしてあったかもしれない。そう感じるようなリアリティのあるドラマ。お話かもしれないけれど、彼らの心はリアルに存在する私たちの心と共鳴しているような気さえします。
ガオシンが好きでたまりませんわ。ガオシンに萌えたというより、彼の母になりたくてたまりませんでした。もう本当、こんな愛情に飢えた社会があるんだとしたら、こんな愛情に飢えた子が本当にいるのだとしたら、鈴花のように全力で愛してあげる誰かの存在を望まずにはいられません。
鈴花は家に帰ることもできたと思います。鈴花にはその権利があったと思います。彼のことをわすれて、幸せになることだってできたはずです。
「帰れよ。そして俺を振ったことを一生後悔しろ」
これ言えてしまうガオシンも格好よすぎますが、それに魂から応えることができた鈴花が本当……すっごく格好よくて、なんというか静かに激しい女性だなと思いました。情熱的で穏やかだけどすごくみなぎるように愛に満ちてる子です。
思い出すと涙また出てくるから落ち着くまでは読み返しません。だけどすごくよいお話に会えました。このカタルシスはすごい。さつきさんのお話を読んで、絶対にここまで書き込める技量を身につけようと覚悟しました。追いつけないかもしれませんが、目指します。
すごく好きなお話です。出会えてよかった、ありがとうございました。

高良あくあ様「とある狼少年と赤ずきんの恋詩」感想

高良あくあ様のサイト
わかりませぬ。

「とある狼少年と赤ずきんの恋詩」
http://karappono.web.fc2.com/douwa/koiuta.html

あらすじ
誰が呼んだか赤ずきん。赤い髪に浅葱色の目、美しい容姿に生まれたミルドレッドは、あるとき狼の少年を拾う。
これは寂しい赤ずきんと孤独な狼少年の恋の物語り。立場をこえた絆の物語。

感想
大団円。という言葉が読み終わったあとに浮かびました。
単純に言うならばスカっとしました! ドロッとしたお話も好きですが、こういうスカっと最後霧が晴れたようにすがすがしいお話もいいですよね。
ミルドレッドはどこから見てもよい性格。クルトも爪弾きにされてたわりには曲がらずよく育った青年だと思います。もうこりゃ恋の予感しかしないでしょ! くっつけよくっつけよくっつかないの!? くっついたー! のような最後スマホの前で拍手してました。なんというか、読み終えたあとになんだか清涼さも残る爽快感でした。ライトなのにすごく引っ張りこまれた感じ。何がどうしてという理由はわからないけれど、引力のある世界観がぐいぐい引っ張っていってくれました。
これから先の彼女たちに幸あれです。
ここで物語が終わってるのに永遠に語り継がれるような雰囲気が好きでした。ありがとうございました!