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たかしょう様「葡萄の言い分」の感想


たかしょう様、このたびは感想のご依頼ありがとうございました。

今回読ませていただいた「葡萄の言い分」のアドレスはこちらになります。
http://ringoss.net/novels/raisin/raisin.html

くどいまでにメロドラマとのことで、とても楽しみに読ませていただきました。
メロドラマというよりはロミオとジュリエットっぽい戯曲を思わせるような語り口ですよね。
たかしょう様の作品は今までにもいくつか読ませていただいたのですが、とても読みやすい、きれいな文章だと思います。だけど今回はそれにも増して、その光景や空気が伝わってくるかのような、素敵な文章で、何度私は読みながら感嘆のため息をついたかわかりません。
特にザヴィエと天の葡萄との会話は秀逸すぎると思いました。
私もザヴィエに愛を語ってもらいたいですよ! なんだこのいい男、ここまでの覚悟をもってして、天の葡萄を愛すると決めた男、何も知らないとお互い思いながら、相手のことを一番に考えて自分の都合は二の次三の次なお二方。
もし天の葡萄が葡萄のためにザヴィエを望んだら、ザヴィエはここまで天の葡萄に入れ込まなかったのかもいれませんね。天の葡萄も玉座のためにザヴィエが天の葡萄を選んだと思っていた頃は頑なだったけれども、それは言い換えれば愛していたからこそ王に彼を据えたくなかったわけで、なんとも彼らが愛おしくなるような、そんな優しいお話です。
最後の式典のときに、どっちがどっちを罠にかけて今の状態になたのか、と話し、お互い「私があなたを罠にかけた」と言い合って、とどめのザヴィエが
>王がわたしに、葡萄を与えると言ったとき、どれほど嬉しかったか想像がつくか? これがお前の罠であったというなら、わたしはなんどでもその罠に落ちよう
と言ったところで私は「結婚してください、ザヴィエさん」と呟いていました。
だけど私が罠はってもせいぜい砂場の落とし穴程度だろうな。傭兵のザヴィエさんはホップステップジャンプで飛び越えちゃいそう。(汗)

葡萄は甘くておいしいものを想像しがちですが、腐って地面に落ちる葡萄があってはじめて種ができ、地面が豊かになると思い出させてくれる、素敵なお話でした。
始終もだえっぱなしでしたよ。たかしょう様ありがとうございました!
 

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最近読んだ本4

「変身」 / カフカ

不条理すぎる! グレーゴルが何悪さしたっての!? と風呂場で読んでいたため、本を床に叩きつけることができなかったけれども思った。ある日虫になってしまったグレーゴル=ザムザが虫として生活し、家族やご近所さんに怖がられたり嫌がられたりするお話。なぜ虫になったかには触れられず、グレーゴルが特に悪いことをしたわけでもなさそうな感じ。天罰とかのたぐいではないです。
きっと最後は虫でなく人間に戻れるんだよね? ね? と思いながら読んでいたため、結末を知っている方は私がどんなに落胆したかご理解いただけると思います。汽車で次第と明るくなっていく家族たちに「気持ちはわかるが、痛いほどわかるけれども、でもそれはあんまりだ」と言いたくなりました。
相変わらず感情移入しまくりで読みました。自分が朝起きたら虫になってたらどうしようって考えると、グレーゴルと似たような運命をたどりそうでとてもとても悲しいです。




「鏡の国のアリス」 / ルイス・キャロル

キャロルって頭がいいんだろうなあと思います。どうしたらこんな摩訶不思議なお話思いつくのだろう。
アリスのおしゃまな口調と、変な登場人物たち、特に私は主役級の赤の女王と白の女王がお気に入りです。赤の女王の「そりゃ詭弁だ」と言いたくなるような屁理屈とか、白の女王の
「昨日のジャムと明日のジャムはあるけれども今日のジャムはない」
「いつかは明日のジャムは今日のジャムになるんじゃ……」
のようなこれもまた言葉のマジック。
ともかく鏡の国の住人たちの言うことは無茶苦茶だなと思いながら、アリスがそんな変な奴らに愛想も尽かさずずっとおしゃべりをしている様子がまた、不思議な感じ。大人だったら「こんなの変だろ!」って言いたくなるようなことにいちいち丁寧に突っ込む。そこは「なんで!?」でいいじゃんと思うようなところまで丁寧にこねくりまわす。アリスは将来きっとおしゃべりな奥様に育つことでしょう。十六歳になったアリスの出てくるアリス・イン・ザ・ワンダーランドをちょっと思い出した。
アリスは七歳。この年齢だからできることってあるよね。

最近読んだ本3

「うたかた/サンクチュアリ」 /吉本ばなな

正直なところ、読み終わったあとの感想は結局ストーリーってなんだったんだろうということ。こういうストーリーだよと説明しづらい。不思議なふわっとした終わり方をするものだから、ここで終わったのかどうかよくわからないような余韻が残る。文体の相性がすごくよかった。こういう音は好き。
作中に鳥海人魚って女の子が出てくるのですが、「娘が地上の万物に愛されるように、って、鳥も海も人も魚も名前に入れちゃったの」というあたりがすごく好きなくだりでした。この作品は、なんというかふとしたときに胸に広がる不思議な波紋が好き。
だけどストーリーが好きかと聞かれれば、正直うーんという感じでもある。音と余韻を楽しむ作品って感じかなというイメージです。



「レプリカ・ガーデン 廃園の姫君と金銀の騎士」 / 栗原ちひろ

栗原先生の作品はどうにも体言止めを使うときのタイミングが私と合わないらしく、なんかブツ切れしているようなイメージが私の中に残る。たぶん栗原先生も悪くないし、私も悪くない。純粋に体言止めを使うタイミングの相性が合わないだけ。
レプリカ・ガーデン一作目についてはちょっと厳しめな感想を書いてしまったけれども、二作目はとても面白かったです。本の虫、図書館寄生虫のお嬢様クリステルとその従者ヴィリ、そして墓守のルカ。出てくる登場人物の信じる美学が好き。ところどころはっとさせられるような台詞回しに、彼らが何を大事だと思っているかが出てきているような気がする。
一作目で出てきたアーセル(私が好きだったキャラ)が再び登場したのも嬉しかった。二作目のルカのぎらぎらした格好良さとは違う良さがあると思うんだ、アーセルには。
実はこの図書館にはちょっとしたトリックがありまして、こういうからくりは私も一度使ってみたいなあと思った。本当勉強になった一冊です。栗原先生ありがとう。

罪と罰(下)

「罪と罰(下)」 / ドストエフスキー

ドストエフスキーは全作読みたい作家さんの一人なのですが、いかんせんロシアの名前に親しみがないため読みづらくてまだ罪と罰しか手をつけてないという。再読しました。まだきちんと読めてる自信はありませんが、一度目よりはややしっくりきている感じ。
予期せぬ第二の罪を犯したラスコーリニコフが罪悪感に怯えたり良心の呵責に悩んだりする様子が書かれている一冊。くどいまでに「こいつ、狂ってやがる」とラスコーリニコフを生ぬるい目で見るしかない。頭の回転が早過ぎるがゆえにイッちゃったタイプだなと思いました。個人的に好きなのはソーニャとポルフィーリイ。ソーニャぐらい犠牲の精神と善良さにあふれた人が多かったらさぞかし日本は平和だろう。ポルフィーリイも「へ! へ!」って笑い方さえなければ格好いい人物だと思う。

なんというか癇癪持ちのドストエフスキーが書いただけあって、うまく言えないのですがヒステリーな登場人物が多いなと感じました。作家さんの精神状態って絶対本に影響するもんだよね。
ラスコーリニコフには好感がもてる。自分が殺した理由に後付けでもっともらしい理由はつけずに、「自分のために殺したんだ。僕にいちばん必要なのは金ではなかった。金ではなく、他のものだった」というソーニャへの懺悔のシーンでは、彼の気持ちがよくわかってうんうん頷いてた。金じゃあなかったよね、だけど“他のもの”がなんなのか君にも私にも言葉にできないんだよね。あれだよね、あれなんだ。のような暗黙の了解。名誉とも違うし、証明とも違う、勇気でもない。でも何かラスコーリニコフはその殺しで手に入る感情があることを知っていた。第二の殺人がなければ彼は自首をしなかったかもしれない。
有名なシーンではあるんですが、罪と罰で一番好きなシーンと言ったら大地に彼がキスをするシーンです。それから続く、一年後にソーニャの膝に手を置いて泣くシーンも好き。
私、この話読むといつも「罪」はなんとなく把握するとして、「罰」ってなんだろうなって考えるんですよね。そりゃ最後は流刑にされるわけだけれども、誰も彼のことを裁いてないじゃない? と思うわけです。罪悪感と良心の呵責が罰だったなんて、そんな単純なものでもない気がするし。
なんとなく思うのは、罪を犯すことによって自分が世界にひとりぼっちになったような、そんな錯覚が罰なのかなって気分。ポルフィーリイが「自分から自首してきますよ」って言ったところにすべて集約されている気がする。
大地にキスして神に許しを請うのは、暴走した頭脳だけの世界から人間らしさに回帰するみたいな意味があるのかなーなんて、そんなことを素人の私は考えるました。ドストエフスキーの解釈とか、たぶん文学科出身の人だと詳しいのでしょうけれども、私はちょっといまいちでして(汗)

あと一回くらい再読したいところだけれども、その前に本屋でカラマーゾフの兄弟を買ってこんといかんです。色々読んだあとに罪と罰を再読すると、もうちょっと違う感想が出てくるかも。

最近読んだ本2

「ラブリー・ボーン」/アリス・シーボルト

正直一回読んだだけじゃあしっかり理解してない自信がある。
娘が殺されて、父親が復讐の鬼になって犯人を追うなんていうのはお話の中だけ……そんなお話な気がする。悲しいはずなのにあたたかい、あたたかいはずなのに現実ってこんなだよねって感じ。
だけどこういう話があってもいいなと思う。むしろ、こういう作品かけたらなって思っていた作品が目の前にあったって感じだった。もう一度くらい読みたい。




「されど罪人は竜と踊る」/浅井ラボ

世界観はとてつもなく好みなのに、文章が肌に合わないらしく何回か挫折しかけた。だけどオトナ買いしちゃってるから根性で読む! と読み進める。
悪役でなくまっとうな人が死んでいく世界。枢機卿がこの悪党が! と思いながらもすごく好みだった。悪党って残忍で人をばっさばっさ殺していくのとは違うと思うんだ。何かの信念のために何を犠牲にするのも厭わないって感じだと思う。ここまで格好いい悪党だったらしてやられた! と思うことがあってもいい、そう感じてしまった。



「レプリカ・ガーデン」/栗原ちひろ

正直、最初はちょっと苦手な世界観だった。というか途中まで、何がよくてフォルトナートを好きなのかも、ぜんぜんわからずに感情移入できないまま進んでいった。人形のイファの気持ちはわからないまま、周囲の人間の気持ちだけがよくわかる。そういう世界観なのかな? というのが最後の気持ちの落とし所。人形の気持ちは人間には理解できないけれども、人形は人形の理論で動き、人間は人間の理論で動く。人形が人間に恋をしたとき人間になり、それは時には悲しい運命も生み出す。
読後感はやっぱり「ん?」と思うところもあったけれども、きれいな世界観だなと思った。