空也いつきさん、「石蛍」 空也いつきさんのサイト http://wyrdred.com/ 石蛍のページ http://wyrdred.com/novel/ss/hotaru.html あらすじ 石蛍を知っていますか? 蛍石ではありません、とても珍しい蛍です。 本当は最初、擬似親子のお話から拝読したのですが、まだ長編の序盤しか書いてなかったようなので、感想が自分の中でまとまりづらかったため、短編の感想を書くことにしました。 光に触れると石化してしまう綺麗な石の蛍。こんな幻想的な設定を思いつくのがまずすごいなあと思いました。ファンタジー脳でない私の頭からはひねったところで生まれてきません。光を浴びた蛍は石化して、それは高く売れるとのこと。生かすも殺すもあなた次第ですよと主人公に渡す怪しい商人。彼の意図はわからないけれども、そこでお話は途切れる―― 結論がないからいいのかなと感じます。石蛍を手にもったまま途方にくれる主人公の姿が見えるよう。こういう結論を言わない形で余韻を残すって本当に上手だなあと思いました。 素敵な作品ありがとうございます。 PR
最近読んだ本 「暴走少女と妄想少年2」 / 木野裕喜 木野先生、読むの遅くなってすみませぬ(汗) 何分読むにスイッチが入るのがすごく遅いもので。 まあ木野先生がこのブログ知ってるかも定かでないんで、とりあえず感想のほうを。感想のほう……を。 正直どこから書けばいいのかわからないんですよね。マックでカフェオレ飲みつつ読んだのですが、途中何度か吹いて周囲の人の目を気にしながら顔を本に埋めるのですが、そしてまた「ぶはっ」となる怪しい人だったのは覚えています。 前に善一くんが好きだと言ったことがあるのですが、正直ヒロインの口の悪さには閉口してしまうところもあり、今回もなんて身勝手な子! と何度か思ったのですが、そもそも16歳ぐらいの頃ってみんなけっこう身勝手に振る舞うもんですよね。みんな自分中心に世界が回っているような錯覚しているのが高校生くらいかなって思い直したら、なんか微笑ましい視線で見られました。 しっかしラブコメが好きな人が見て笑うならばわかるけれども、ラブコメがそんなに好きでない人も思わず笑うストーリーってすごいですね。アホらしいやり取りでしかないのに、うっかり笑ってしまうのです。 大真面目に笑える話を考えられる人はすごいなと思いました。 「若き詩人への手紙 若き女性への手紙」 / リルケ よりいっそうリルケが好きになりました。 若き詩人への手紙は読んでいて、うん、うん、そうだよね。と何度もうなずき、だけどこれを実行できるモノカキさんは現代でも少ないんだろうなあと思いました。私ももちろん難しいよ。 若き詩人、カプスくんはこれだけリルケにはげましの手紙をもらいながら、最後は大衆小説を書くようなところまで堕ちてしまった。これは残念なことだ……のような記述が最後にあるのですが(リルケでなく編者によって)なかなか実行できるもんでないよ? と思う。外側から見て批判するのは簡単だけれどもね。たしかに残念なことではあるけれども、実行するのは難しい。 若き女性への手紙、のほうはとても難解だった。何度か読み返してみたけれども、やっぱり理解できた感じがしない。言葉を理解しようとしても目から文字がつるつるすべっていってしまう感じ。ただ苦しい苦しいって感情はすごく伝わってくる。リルケの苦しさというよりは、リルケが女性の手紙を読んだときに心をいためたのが彼の返信にのったのかな? と思ったけれども違うかもしれない。 若き女性への手紙は、若いうちに読んでもよくは理解できないかもしれない。リルケが何か必死に女性に訴えてるのはわかる。何かを必死に止めようとしているのもわかる。だけどリルケが何を危惧して止めようとしているのかは、解説を読んでもいまいちピンとこなかった。 わかるようになる日がくるといいな。 印象に残っているのは、「どうしてもそれは新大陸でなければならないのですか?」という言葉。捨てようとした大地には希望がないのかというメッセージ。 この言葉の深い意味を私はまだ理解していないと思っている。 「無境界」 / ケン・ウィルバー トランスパーソナルセラピー関係の本。善と悪、醜と美、上と下など……人間が境界線を引いたところに葛藤や争いが生まれるのであって、自然界にはこのような境界線は存在しないというお話。 読んでいて納得させられることも多かったし、スピリチュアルには抵抗あるけれど、という人が心理学の延長上でやる学問としてはちょうどいい入門書だと思う。 だけどその無境界――境界線なんぞないんだよということを自覚することの難しさは、語ったところで理解されるかなって感じです。まっさらな無境界の地に到達したところで、他の人たちは境界を勝手に引いた世界で生きているわけだから、生ある以上、時代が許さぬ以上はまた境界の引かれた世界にいつかは戻ってこなきゃいけないんですよね。 それでいいとは思うんですが、全体をとらえるというのは今となっても難しいです。どうしても人間が全体と思っているものはどこか一部だったりするもんだよね。孫悟空が遠くまでいったと思ったのに観音様の手のひらの上をぐるぐるしていたみたいにさ。 同一化と脱同一化を自由自在にできるようになるのはこれから先に私のテーマだなとは思うのだけれども難しい。
Tiny tales(青) セットで配布されたタイニィの別冊のほうです。 はりきって感想書きます。 「黄昏橙」 / takaoさん 黒田! 黒田が格好いい!! 橙子も可愛いんだけれども、ともかく黒田がオトコ前。いいわー、こういう男の子に中学時代に告白されるって、怖くもあり、素敵な経験ですよね。夏の空気とか、黄昏に沈んでいく陰った色とか、汗のにおいとか、体温とか、色々伝わってきそうな感じがすごく好きな作品でした。 青春作品ゴチであります。 「凍む国の皇子、獣者の仔」 / スイさん な、泣くかと思いました。ぜひ長編で読んでみたい作品。SSを読んだとは思えない満足感。胸がいっぱいになります。はなは捨て子なのに健気だな。普通もっとやさぐれそうな気がするのに、こんな扱いばかりうけていったら獣の子に心までなってしまいそうなのに。 「心のやさしい、おまえは俺の子だよ」という東雲の言葉に鼻がつまりそうになりました。はなといっしょに泣くかって気がしました。本当ありがとうございます、こんないい作品に出会えて幸せであります。 「妖狐ノ怪」 / 白馬黎さん 文語で書いてあるから日本語音痴の私に読めるかしら? とちょっとびびりつつ読んだのですが、物語にのめりこんでからは文語であるかどうかは気にならなくなりました。妻と子を愛してしまったがゆえに、樵を殺して夫になりかわる妖狐。正直それがいいのか悪いのかはわからないけれども、本当にピュアな妖狐だなと思った。だから間違ったことをしたり偉そうだったりするのになぜか鼻につかないんですよね。妖怪に生まれなければまた違う人生があったかもしれないよね、と思えるような嫌いになれないタイプの妖狐のお話でした。 「はつ恋」 / 冴島芯さん 実はこれ、本編あるのかしらと前のめりになるくらい気になったお話。陰謀やら友情やら、色々な片鱗を見え隠れさせながらも短編でさくっとまとめてある。本編ないってことはないだろうなあと思いつつも、とりあえず国王の性格が格好いい。まさに獣のような男。ミシェーラも運命を受け入れつつ、賢く立ち回ろうとしている様が格好いいなあと思った。騎士になった王女のアンジェリカ様も健気だ。このお話、絶対に好きになれることうけあいなしだと思ったのでもし本編があるならば教えていただきたくそうろう。 「ひきょうもの」 / 桜庭春人さん あるんですよね! アルフレッドみたいに不味い料理しか出さない喫茶店って本当に。それ以外の雰囲気はごっつういい感じなのにとても残念なアップルパイの味が想像できます。 修二くんに何度「頂いちまえよ」と悪魔の囁きをしたかわからぬ私ですが、全然卑怯でもなんでもない修二くんはちゃんと彼女を勇気付けて送りだしました。チャンスだったのに、そのチャンスを逃しちゃう修二くんはお人好しといよりも誠実な男の子なんだろうなと思います。 ケータと御栗も、修二くんもいつか別の誰かと幸せになってくれればいいなあと思います。
Tiny tales(赤) 桐原さくもさんところで無料配布していた同人誌。 あやとりうたの宣伝のために各作家さんを知ってもらう目的だったかだと思うのですが、無料配布したの? ええええ!? と思ってしまうようなクオリティにびっくりであります。 そんなわけで、ひとつずつ一言感想を添えようかと。 「さくらの夢、涙のしずく」 / 青柳朔さん これ読んでる最中に「泣くことは、弱さなのか」という有仁の言葉がぐるぐるしてたんですよね。泣くことを忘れてしまった有仁、泣くことをやめたいのに辛くて泣く白妙。「気持ちをかくしてしまうことは、つらいことだわ」と白妙が言うシーンでそうだそうだといっしょになって頷く私。でも有仁の気持ちもわからなくもない、始終泣く人が近くにいたりすると逆に泣けなくなったり煩わしく感じたりするもの。 涙を流すってどういうことだろうな。読んだあとにぼんやりそんなことを考えていました。 「忘れえぬ こひとしりてか」 / きくさん 描写の字の温度が抜群に心地いいなというのが第一印象。すごく相性のいい文章だった。お手本にしようかなと思ったくらいです。 場面としてはほとんど展開しないし、台詞もほとんど入っていないはずの文章なのになんでこんなに心が打たれるんでしょうね。凡人である幼なじみの許嫁、才媛の主人公。こういっちゃ不謹慎なのかもしれないけれども、名前も出てこない凡庸な幼なじみの少年が少し羨ましくもありました。一生のうちに可哀想と思ってくれる人はいたとしても、これだけ愛してくれる人が家族以外に、十代という若さで出会えたことが羨ましく感じた。それ以上に過酷な運命があるため、幸せとは言えないかもしれないけれども、久子が少年を愛してくれてよかったと感じました。それに対して少年が臆病な態度をとったとしてもね。素敵なお話でした。 「ご主人様のいうとおり!」 / 詠城カンナさん 自分のことをご主人様、父親のことを旦那様と呼べという第一のお願い。第二のお願いで「旦那様の望む服を着てほしい」これはちょっと邪な思考の持ち主としてはR指定な展開を期待せずにはいられませんな! いえ、本当はそんなお話ではありませんが。 ルカはツンデレって一言で表現するのもちょっと違う気がするんですが、愛情表現の仕方が屈折しているんですよね。「ありがとうございます」って言わなくてもいい状況を作ってあげるところとか、とても親切だと思うのだけれども。エレナがルカの優しさに気づくのはいつになるのかな? とちょっと話の続きがきになるのでありました。 「冬枯れの王と春の魔女」 / 東堂燦さん 思えば思うほど遠くへ行ってしまう愛しい恋しいあなた……。私がこう書くと陳腐ですね(汗) 東堂燦さん、どうしてこう胸を抉るようなストーリーを毎回書けるのでしょうか。 「嫌いっ、……嫌い、春なんて」 って台詞のあたりに彼女の感情慟哭すべてがこもってる気がして、本当に一年のうち一瞬しか会えないカップルなのだわと思って切なくもなり、死してなおも語り継がれる伝説のカップルと考えると熱いなあとも思いました。 「花の与力」 / らんぷさん 冒頭のスタートから中盤の流れを読んでる最中に、場違いにも「これ、ショートショートで終わるのかしら?」と思ってしまいました。が、さすがそこは作者の腕の見せ所、オチの部分で前半の謎が解け、かつ与力の恐ろしさまでわかって。こういうワンシーンだけ切り取って魅せる方法って私は得意ではないので、参考にしなきゃなあと思いました。 個人的にはこの与力さんの腹黒さが私はけっこう好きです。だけど綱吉の時代にこれをやってのけたとしたら鬼だな……と思わなくもない(笑)
藍間真珠さん、「時雨組シリーズ 五の組」 時雨組シリーズ http://indigo.opal.ne.jp/novel/sigure/index.html 藍間真珠さんのサイト http://indigo.opal.ne.jp/index.html あらすじ 琴は相棒を流行病で失ったばかりだった。女好きでクセのあるお頭が琴の新しい相棒に選んだのは、あんなに嫌だと言っておいたはずの男!? 感想 まず同人誌の扱いをどうしようか悩んだのですが、アドレスがわかるものは貼りつけちゃってよいでしょうか? アウトー! という方がいましたらご連絡お願いします。 時雨組シリーズの本編のほうは読んでないのですが、同人誌のほうでメインに扱われてるのは「五の組」琴と竜の二人組と、偶然お世話することになった千鳥ちゃん。 「真珠さんのお話初心者には何が向きますか?」と真珠さんに聞いてみて、勧められたのがこの一冊。擬似親子大好物ですよ。うほほーい。 そんなわけで、喜び勇み足で読みました。 水波立つは風故に 雨の後には銀踊る 藍の縁もて花咲きて 祭りの夜に蛍飛び まずタイトルがすごく綺麗だなっていつもため息が出ます。こんな綺麗な日本語使いになれたらどんなによかったことか。 真珠さんの作品は本当不思議。晴れた日に読むのと雨の日に読むのと憂鬱な日に読むのじゃ全然違う気持ちになるんです。 晴れた日に時雨組を読むと千鳥の明るさが「千鳥ちゃん可愛いなあきゅんきゅん!」ってなるし、雨の日に読むと情景描写をがっつり読んでしまってその風景に溶け込みそうになったり、憂鬱な日に読むと晴れた日に読んで可愛いと思った千鳥ちゃんが我侭に見えてイライラしたりとかも! そしてなんか時雨組の普段のストーリーの裏に陰謀のサスペンスストーリーがあるんだわなんていうもくもくとたくましい空想が育ったりするわけですね。 まさに天気のようなお話だなという感じです。 不思議な魅力をもった真珠ストーリー。次は……ファラールかもしそばに手をつけるんだい。