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Tiny tales(赤)

桐原さくもさんところで無料配布していた同人誌。
あやとりうたの宣伝のために各作家さんを知ってもらう目的だったかだと思うのですが、無料配布したの? ええええ!? と思ってしまうようなクオリティにびっくりであります。
そんなわけで、ひとつずつ一言感想を添えようかと。

「さくらの夢、涙のしずく」 / 青柳朔さん
これ読んでる最中に「泣くことは、弱さなのか」という有仁の言葉がぐるぐるしてたんですよね。泣くことを忘れてしまった有仁、泣くことをやめたいのに辛くて泣く白妙。「気持ちをかくしてしまうことは、つらいことだわ」と白妙が言うシーンでそうだそうだといっしょになって頷く私。でも有仁の気持ちもわからなくもない、始終泣く人が近くにいたりすると逆に泣けなくなったり煩わしく感じたりするもの。
涙を流すってどういうことだろうな。読んだあとにぼんやりそんなことを考えていました。

「忘れえぬ こひとしりてか」 / きくさん
描写の字の温度が抜群に心地いいなというのが第一印象。すごく相性のいい文章だった。お手本にしようかなと思ったくらいです。
場面としてはほとんど展開しないし、台詞もほとんど入っていないはずの文章なのになんでこんなに心が打たれるんでしょうね。凡人である幼なじみの許嫁、才媛の主人公。こういっちゃ不謹慎なのかもしれないけれども、名前も出てこない凡庸な幼なじみの少年が少し羨ましくもありました。一生のうちに可哀想と思ってくれる人はいたとしても、これだけ愛してくれる人が家族以外に、十代という若さで出会えたことが羨ましく感じた。それ以上に過酷な運命があるため、幸せとは言えないかもしれないけれども、久子が少年を愛してくれてよかったと感じました。それに対して少年が臆病な態度をとったとしてもね。素敵なお話でした。

「ご主人様のいうとおり!」 / 詠城カンナさん
自分のことをご主人様、父親のことを旦那様と呼べという第一のお願い。第二のお願いで「旦那様の望む服を着てほしい」これはちょっと邪な思考の持ち主としてはR指定な展開を期待せずにはいられませんな! いえ、本当はそんなお話ではありませんが。
ルカはツンデレって一言で表現するのもちょっと違う気がするんですが、愛情表現の仕方が屈折しているんですよね。「ありがとうございます」って言わなくてもいい状況を作ってあげるところとか、とても親切だと思うのだけれども。エレナがルカの優しさに気づくのはいつになるのかな? とちょっと話の続きがきになるのでありました。

「冬枯れの王と春の魔女」 / 東堂燦さん
思えば思うほど遠くへ行ってしまう愛しい恋しいあなた……。私がこう書くと陳腐ですね(汗) 東堂燦さん、どうしてこう胸を抉るようなストーリーを毎回書けるのでしょうか。
「嫌いっ、……嫌い、春なんて」
って台詞のあたりに彼女の感情慟哭すべてがこもってる気がして、本当に一年のうち一瞬しか会えないカップルなのだわと思って切なくもなり、死してなおも語り継がれる伝説のカップルと考えると熱いなあとも思いました。

「花の与力」 / らんぷさん
冒頭のスタートから中盤の流れを読んでる最中に、場違いにも「これ、ショートショートで終わるのかしら?」と思ってしまいました。が、さすがそこは作者の腕の見せ所、オチの部分で前半の謎が解け、かつ与力の恐ろしさまでわかって。こういうワンシーンだけ切り取って魅せる方法って私は得意ではないので、参考にしなきゃなあと思いました。
個人的にはこの与力さんの腹黒さが私はけっこう好きです。だけど綱吉の時代にこれをやってのけたとしたら鬼だな……と思わなくもない(笑)
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