ユキモトさん、「ぬいぐるみ派遣協会」 感想 ユキモトさんのサイト http://snowbook.6.ql.bz/ 「ぬいぐるみ派遣協会」 http://ratebra.web.fc2.com/nuikyou.html あらすじ 僕らは意思をもったぬいぐるみ。持ち主の苦しみはぬいぐるみの苦しみ、持ち主の喜びはぬいぐるみの喜び。統括と呼ばれるぬいぐるみを中心に、意思をもったぬいぐるみたちと、所有者である人たちのちょっと悲しく、そしてやさしいストーリー。 感想 ユキモトさんのぬいぐるみ派遣協会は昔読ませていただいたことがあったのですが、終わりを見ることなくmixiを退会してしまったので気になっていた作品でした。 統括こととんかつ。私はとんかつのほうが好きです。リカの周りに4体もの意思をもった人形たちが集まり、リカの寂しい心を慰める。リカに呼び寄せられたのかな? それともリカが彼らの心に呼び寄せられたのかしら。 ぬいぐるみって捨てるのもちょっとなと思うくらいつぶらな顔していて、置いていくのもちょっとなと躊躇して、のように扱いに困る私なのですが、リカはぬいぐるみが好きなよう。リカが寂しいからというのもあるけれども、私個人的には人間のようにレスポンスしないのがいいと感じているんじゃあないかという深読みをしたり。リカはきっと普通にただ、受け止めてもらいたいだけなんですよね。感受性の豊かな彼女は、心のスペックに感情が追いつかない。本当はハルヤにヘルプしたかったんだけれどもそれもうまくいかない。 持ち主の幸せがぬいぐるみの幸せ、って主体性がないように聞こえるけれども、ぬいぐるみに主体性がないからこそ人間は癒されるのかもしれない。そんなことを考えさせられる作品でした。 PR
比紗由様 「花、落つる」 比紗由さんのサイト http://sorairosonoiro.web.fc2.com/index.html 「花、落つる」 http://sorairosonoiro.web.fc2.com/hanaot.html あらすじ 百合は剣道場の娘。ある日酔った父が娘と道場を商品に腕試しを開催すると言い出す。 集まった若者の中で百合に挨拶しない若者がひとり。蚊の鳴くような声でしゃべることから、蚊三郎と呼ばれている男だった。 感想(ネタバレあり) 蚊三郎と幸せになるんだろうなあと思っていたらおわあああああ! と中盤までいったところで裏切られた気分。花三郎、そりゃないぞなと思った。彼が最期に百合に残したお願いごとが、句帳を見ないでほしいとのこと。最後の最後まで恥ずかしがりやさん。花三郎が亡くなったあとの夫婦のエピソードが、彼らの悲しみを如実に語っているようで、せつないなあ、はあ……とため息の出るようなお話でした。
灰よ、竜に告げよ 「灰よ、竜に告げよ -されど罪人は竜と踊る-」 / 浅井ラボ この回でされ竜好きになっている人がすごく周囲に多いのですが、私もされ竜の虜になりそうです。 いや、残酷だったり重いテーマが好きって意味ではなくてね、これって他人ごとじゃあないよねと思わされることをファンタジーで表現するってうまいなあと感じた。いい時期に読んだなとも思っている。 禍っ式のように徹底した理論や理想では動けない生き物、それが人間。レメディウスの絶望もわかるし、ガユスの言い分もわかる。このお話読んでいると、色々な人がそれぞれの言い分・信念に基づいて行動していて、誰かのために世界が動いているわけじゃあないんだって感じがしてそれが好き。そしてジヴーニャがめっちゃ好みなんですけれども! ジヴ、可愛い。ガユスといつまでもラブラブしていてほしい。 ともかくファンタジーで、キャラもめちゃくちゃ個性的なくせに、妙にこういう奴いるかも……と思うような人間らしさをちらりと見せられるのが魅力的な作品でした。 文体にも慣れてきたので、次の巻もこのペースで読んでいけたらなと思います。
八束様 「物言ふ魚の夢」 八束さんのサイト http://www.geocities.jp/akari23432/heihe/xxxxxiriguti.html 「物言ふ魚の夢」 http://www.geocities.jp/akari23432/heihe/monoihu.html あらすじ 潮の匂いがした。花世(はなよ)は海の中に続く洞窟を見つけて探検に入る。そこで一匹の魚を見つけて…… 感想 描写がともかく綺麗。というか好み。本当に潮騒の音がしてきそうな、それでいて静かさが伝わってくるような描写。花世が海の中の洞窟を行って戻ってくるだけの話なのですが、私はこのお話の雰囲気が好きです。 文体で好みな人ってなかなか見つからないのですが、八束さんの文章はそーめんのようにつるつるいただけました。 他の作品もぜひ読んでみたいと思えたので、この作品は良質な短編なのだと思います。
桐原さくも様 「からふる、ぱれっと。」 桐原さくもさんのサイト http://kotokaze.chu.jp/ 「からふる、ぱれっと。」 http://kotokaze.chu.jp/tiny-story/-index.html あらすじ なんとなく死にたくなってみたり、ふいに得体の知れない感情に支配されそうになったり。 誰にも触られたくないのに、ひどくぬくもりが欲しくなる、そんな毎日。 不安定な少年少女の日常を描く短編集。 感想 「せんろむこうの、わらうねこ。」まで読みました。 「からふる、ぱれっと。」はいつかは読もうと思っていた短篇集。なんともこのタイトルの語呂が私のツボなセンスなのです。 ストーリーのほうは少年少女時代にいかにも考えそうな、死にまつわるお話が今のところ多め。生きづらいと感じる時期だよなあ、あの頃って。と思うと同時に、作中に出てくるハッとさせられるような表現に驚く。 「黒江。わたしたちの手には、まだ水かきが残ってるんだよ」 アキアカネが、相変わらず飛んでいた。 十色を追いかけながら――落ちずに飛ぶことが出来る奴らはすげえと思った。 こういう表現力ってぜひ私も欲しいなと感じる。 そういえばそうだな! と感じるものを絶妙なタイミングでいれてくれるのでさくもさんの小説は好きです。 この作品はイッキ読みしたいというよりは、少しずつ時間をかけて読みたい感じのお話だと感じました。だから後半はとっておいてるのですよ、ふふふ。一気に読むのがもったいないと感じてしまう余韻を楽しむためのお話です。