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シッダールタ

この本ほどやさしく平易に、そして読みづらく先に進むのが怖い本を私は知らないです。
毎日、たった160ページしかない本の一章一章を少しずつ読み進めました。毎日瞑想して物思いに耽り、毎日疲れて寝て、最後まで読み終わった日は知恵熱を出しました。
読むのに一週間以上かかったけど、シッダールタは私のためにある本だと感じました。だけど私はシッダールタの境地まで擬似的にすら達することができませんでした。
川の音を聞くシーンが何度も頭の中を反芻して、瞑想するときに風の音や時計の音をじっくり聞いてみたりもしたんですよ?(笑) だけど風の音は風の音、時計の秒針を刻む音もやっぱりそうとしか聞こえませんでした。
言っている意味はわかる、感情もいやというほど感じて涙が出たくらいです。だけどだめだった。私はこの境地に至るまでの智慧をもっていなかった。知識はいちおうあったけれども、書かれていることは知識として入っただけにすぎなかったのです。
色々なところでつまり、読み進められなくなったけれども、一番つまったのは
「あまりに大きい賢明さを戒めよ!」
とゴータマに言われるシーンです。この答えの意味を何度頭の中で反芻したかわかりません。何度自分を賢いと思って、何度自分を愚かだと思ったことでしょう。私はきっとこの段階なのでしょうね。

シッダールタは私の探していた涅槃の答えの鍵をくれました。
それは存在しない、ただの思想でしかない。「ただの」と言いながら、「今の」私にとってはすごく重要なものなのです。
ゴーヴィンダはシッダールタの影からゴータマの影になった。私はリルケの影からヘッセの影になった。これからも変わっていくかもしれません、なんせ私には数々の尊敬する作家さんがいるので。
ただ、変化するということは美しいなあと思いました。それは永遠の美なんかよりもずっとずっと美しいものです。若い頃は年をとりたくないと思っていたのに、不思議な気持ちですね。

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