あんのーん様 「山吹の門」 あんのーん様のサイト http://novelz.blog4.fc2.com/ 「山吹の門」 http://novelz.blog4.fc2.com/blog-category-9.html あらすじ 俊介のおばあちゃんは拝み屋。引っ越してからしばらくしたある日、おばあちゃんの家を訪ねた俊介は、山の奥で幼い頃想いを寄せていた少女に会う。 感想(ネタバレあり) 「俺の名前ね、画家からとったんだ」というシーンが好きなのですが、俊介という画家はどんな絵を描くのだろうと思い「俊介 画家」でググッてみたのですが、何人かひっかかって結局どの画家なのかわからなかったという。俊介って名前は絵に愛される名前ってことですね! 伽倻子ちゃんが死んだ人で、俊介が生きた人で、そしてお伽話で黄泉の国から妻を連れ帰った夫の逸話となぞらえて俊介の迷いや葛藤が語られる―― 個人的には夫や俊介の愛がなかったから伽倻子や妻から逃げたわけじゃあないと思うんですよね。独身の間は自分が無理すれば友達のところに駆けつけることができるけど、結婚したら家族が最優先になるようなのとちょっと似ていると思う。「限界」ってものを受け入れなきゃ人間は成長できないと思うんですよね。 だけど俊介はまだ若い。そりゃそうだ、まだ未成年だもの。ともかく俊介の年齢だと、「本当に愛しているならば、伽倻子を見捨てないのが道理だ」という結論を出した。それゆえに俊介は黄泉の国で、自分には相いれぬはずの存在を無理やり享受して、それで苦しむ。 苦しんだ末の答えが、安易な答えに落ち着かずに(なんかの奇跡が起こってめでたしめでたしのような)無理なものは無理。できることは精一杯した、それでも無理。という、冷たいようだけれども大切な真理めいた終わり方――つまり俊介が伽倻子を置いて帰ってくるということですが、その結論に私はやたら満足したものを感じています。それでいいんだよ、よくがんばったね、俊介。って言いたくなった。 ホラーであり、お伽話のような不思議な世界観であり、淡い恋のお話のようでもあり……でも私はこれは、俊介が大切なものを失うことによって、一歩大人になる物語なのかな? とも思っています。 のちの俊介の人生は軽くしか語られていませんが、若い頃の苦い思い出はきっと俊介のそれからの生き方に影響を与えたのではないかと、ほろ苦い黄泉路ラブストーリーを興味深く拝読いたしました。 PR